愛されたいのは

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宮田さんにいろいろ教わりながら
1ヶ月くらいが過ぎた頃。

だんだんと常連さんも増えだしてきた。

私もその常連さん達の顔も覚えてきて、
陽気なおじ様とか、大学生のグループ。

来るお客さんは様々だった。





その中でも特に印象に残っているのは…

時々来るお客さんで、ランチを食べ終わった後に
コーヒーを飲みながら本を読んでる人。

いつも決まった席に座るんだけど、
店の外からその席が空いてないとわかると
帰っちゃうの。

たまにお友達と来たりする彼は
"たいすけ"って呼ばれてた。

ここでまた私の悪い観察癖が出ちゃってるんだけど。





"たいすけ"さんは鼻筋がキレイな人で
とても物静かな感じがした。

食べ方もすごくキレイで、ずっと見ていたくなる。

持ってくる本はいつも違ってて、
本を読むのが好きなんだなぁって思った。





今日は一人でゆっくりと過ごしてるように見えた。

店内はいろんなお客さんで忙しくしてるのに
"たいすけ"さんの周りだけはとても静かに見えた。

どんな人なんだろう。

自分の感情をあまり表に出さない感じがするけど
お友達の"わたる"さんと来た時は

すごく楽しそうに笑う。





お会計も終わり、そのテーブルの片づけに向かうと
少し高級そうなボールペンが置いてあった。

そのペンには名前が彫られてあった。


F. Taisuke


"たいすけ"さんの忘れ物っ…




私はすぐに店を出て彼を追いかけたけど、
なんて声かけようっ…

名前は知ってるけど、いきなり下の名前呼ぶのも
なんか失礼だし、ああ、でもっ！

なんて走りながら迷ってるうちに彼に追いつき、
咄嗟に呼んでしまった。


「あのっ…！たいすけさん！」


すると彼は振り返り、少し驚いた顔をした。


「あ…お店の…」

「ごめんなさい、あのっ…これ…」


そう言ってボールペンを差し出すと
納得のいった表情に変わった。


「そっか…名前書いてあったね」

「え？」

「いや、突然下の名前で呼ばれたから
びっくりしちゃって」

「そうですよね！失礼ですよね！すみません！」


ペンを渡して深く頭を下げた。

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