愛されたいのは

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予約のお客さんも帰って、少し早いけど終電前にあがることができた。

着替えてお疲れ様でしたーと外に出てスマホをチェックすると、太輔さんから電話が1件。

折り返し電話をかけると、すぐにコール音はやんだ。


『もしもし、Aちゃん？』

「こんばんは。今 仕事終わって駅に向かって歩いてます」

『一人？大丈夫？』

「はい、こうして電話してれば平気」

『…嬉しい事言わないでよ。会いたくなるから』


太輔さんこそ、こっちの胸が締め付けられるような事言わないでよ。

さらっとそういう事を言ってしまえる彼に、落とせない女の子なんていないんだろうな。







『今日、元気なかったね』

「あ…ちょっと落ち込んじゃってたかな…」

『……今から会えない？』


今 太輔さんに会ったら泣きそうになっちゃうかもしれない。

渉さんにも遊びなら関わるななんて言われたけど、べつに遊びってわけじゃない。

ただ北山さんにも心揺れる時があって、もう自分の気持ちがわからない。


『ダメかな…そんなAちゃん、一人にしておけないんだけど』

「………会いたい」


言っちゃダメだと思ってても、言ってしまう。








すぐ行くから駅で待っててと言われ改札で待ってると、駅前のロータリーに1台の車が止まり、クラクションが鳴った。

その方を見ると太輔さんが車から降りて手招きをした。

小走りで駆け寄ると、助手席側にまわってきてドアを開けてくれた。

「ごめんね、急に」

「いえ、大丈夫です」

車を走らせてる間、太輔さんは会社の後輩の話や、この前行ったバーの千賀さんや二階堂さんの話をしてくれて、

私から話を聞き出すような事はしなかったし、私はその優しさが嬉しかった。

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