愛されたいのは

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『なぁ………今日ヒマ？』

予定があるのは夜だけだけど、ヒマと聞かれればヒマではない。

この部屋に散乱した服の中から、今日着ていく服を選ばなきゃならないっていうのに。

でも私の予定を聞いた北山さんの声が、なんだか寂しがりやの男の子みたいな口調で、

私の中の何かが揺さぶられた感じがした。


「夜だけ予定がありますけど、それまでは大丈夫です…」


なんとなく、太輔さんとの予定があるって言い出しにくくて言葉を濁した回答をした。

そんな私にピンときたのか


『……藤ヶ谷？だっけ？メシ行くの？』

「……はい」


あれ、どうして私、ちょっと罪悪感を感じてるんだろ。

別にいつものノリで、ご飯に誘われちゃいましたー！！とか言っちゃえばいいのに。

今日の北山さんにはなんか言いにくい。


『そっか、じゃあいいわ！明日も仕事よろしく』


と言って電話が切れた。







なんだろう、このモヤモヤは。

なんだかよくわからない感情が自分の中で芽ばえたけど、今はその気持ちにゆっくり向き合う時間もない。

今日の服、決めなきゃ！

あんまり気合い入れるのもなんだし、シンプルに白いセーターとデニムのスカートにした。

12月も半ばにさしかかって、外の気温がグッと下がりはじめたので、お気に入りの黒いロングコートを着ていこう。








夜になり待ち合わせの駅の改札出口付近の柱で待っていた。

すると改札から出てきた太輔さん。

私はすぐにわかっちゃったけど、彼はキョロキョロしてまだ私を見つけられてない。

上着のポケットからスマホを取り出したので、私はLINEを送った。


A見つけた!

太輔さんえっ!?どこ??


ってまたキョロキョロしてる太輔さんがかわいくて仕方ない。

すると人混みの中からようやく私を見つけた彼は、小走りでこちらにやって来た。

「意地悪。声掛けてよ」

「ふふっ、キョロキョロしててかわいかったです」

すると私をジッと見つめた太輔さん。

え、やっぱこの格好、シンプルすぎて変かな。

「髪の毛、下ろしててクルクルだね。
お店と雰囲気違うからわかんなかった」

と私の毛先に触れた。

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