#079 ページ30
なんで。って問い詰めてくるミンギュくん。
その問いにはまともに答えることが出来なくて。自分ですらも今のこの気持ちを表現する最適な言葉が見つからなかった。
友達と呼ぶにはあまりにも距離が近くて、だけど恋人なんてものには程遠くて。
曖昧なこの関係性に、名前をつけることなんて出来なかった。
.
そんな時に鳴り響いた、携帯の震える音。
音の方向からしてミンギュくんの携帯だと思うけど、目の前のミンギュくんは動く様子がない。
「…携帯、鳴ってるよ。」
MG「…」
私のことを見つめて離さないミンギュくんの視線からはどことなく悲しさを感じられた。
「ねえ、携帯…」
MG「Aちゃんいつもそう。ずるいよ。」
“ずるい”
ミンギュくんから発せられたその言葉は、ぎゅっと私の心を締めつけた。
今のまま。こんな曖昧な感情のまま。ミンギュくんの近くにいようなんて考える私はミンギュくんが言う通りずるい人間なんだろう。
.
それでも尚鳴り続ける携帯にミンギュくんは少し顔を顰めて、画面をちらりと見ると多分着信を拒否したみたいで二人の間に流れていた唯一の音が鳴り止んだ。
何も言葉を発さないけれど、ただずっと私を捉えて離さないミンギュくんの視線に吸い込まれそうになる。
もう、自分の気持ちから逃げることはできないのだろうか。
MG「…Aちゃんから明確な言葉が聞けなくてもいい。困らせちゃってごめんね。」
違うのに。もう本当は自分の気持ち分かっているはずなのに、目を背けて楽な関係に逃げてるのはいつだって私なのに。
私は、本当に弱くてずるい。
MG「でもね、今の俺の気持ちは伝えておきたいんだ。」
「…ミンギュくんの気持ち?」
MG「ねえ、手貸して?」
ミンギュくんに言われるがまま、ミンギュくんの服の裾を握りしめていた右手を出すと、ミンギュくんは自分の左胸あたりに導いた。
MG「…分かるでしょ?この音。」
手から伝わるミンギュくんの心臓の鼓動は、私と同じくらいのスピードを刻んでいて。
MG「俺だって、Aちゃんといる時全然余裕ないよ。…だけど、大事な人だから大切にしたくて毎秒必死なの。」
「…ミンギュくん。」
MG「めっちゃダサいよね。それでもAちゃんと一緒にいる時間だったり一緒にいる時の自分が一番好きで素直でいられる。」
俺にとって、Aちゃんはそんな存在なんだよ。と続けるミンギュくん。
その瞳は、さっきとは打って変わって信じられないくらい優しくて暖かかった。
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作者名:ぽんた | 作成日時:2020年3月2日 12時