魔法少女も恋してる。 (ページ8)

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8.魔法少女に接吻。ページ8

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こんなことってあるんだ。

ひとり寂しく繁華街を俯きながら歩いてると、
居酒屋から勢いよく誰かが飛び出してきた。

「もうキョウコさんのばかぁ…！」

一見、真夜中のこういう街では別に珍しくないような、ただのヤバい女性客って感じだったけど、

俺にはそれが誰か、すぐに分かってしまった。

『…Aさん？！』

「ん？おにーさん！わたしんちまでつれてけ！」

そう言われた途端、
フラッシュバックしたのは3年前のこと。

「…あ、おにーさん、えへへ笑」

繁華街からは少し離れた静かな街で道端にぶっ倒れていた、最近話題になり始めたばかりの一人のアイドル。

魔法少女…とは程遠い姿で、
でもやっぱり顔の良さと可愛らしさは異常だった。

『こんなところで何してるんですか…！？』

「酔ったらこけたの！ダサいでしょ！いくらでもわらいものにしなさいよ！」

かと思えば急にぶっきらぼうな口調でそう言い捨てて、もうその時には、俺はAさんにメロメロ。

Aさんのイメージって正直、
魔法少女のあの姿しか無かったからさ。

実はサバサバした性格なのかな、とか、
私服は意外とボーイッシュな感じなんだ、とか。

単純にそんなギャップにやられたのかも。

「うぁ、こわい！おろしておにぃさん！」

『やだ』

それでも結局のところは“可愛い”のがAさん。

無理やりおんぶして、このまま連れて帰ってやろうかとも思ったけど、さすがにそれはアイドル失格、というかそれ以前に人間失格だ。

『家どこですか？』

「んー、あのこうえんをみぎです！」

『…拾ったのが俺でホントに良かったですね』

「あはは、おにーさんイケメンだからよかったかもです！笑」

そんなことを言って笑ったり、

たまに耳元でため息つかれたり、欠伸されたり。

何度も近くのホテルをチラ見したけど、結局は我慢して、俺はちゃんとAさんをお家まで送った。

まぁ、帰る時がいちばんキツかったんだけどね。

明日にはAさん、何にも覚えてないんだろうな、
なんて思うと、胸が一気に苦しくなってしまって。

だからせめて、どうせ忘れるならって、

『…キスさせてください』

「っ！？」

少しの罪悪感を混ぜたキスをした。

こんな経験しちゃったから、
もう俺はAさんにぞっこんになって、
いつの間にか3年が経って、

なぜか今、
ほとんど同じ経験をすることになる。

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