ヨコハマ一角にあるビルには ページ25
昼の世界と夜の世界、その間を取り仕切る薄暮の武装集団こと武装探偵社はヨコハマにある一角のビルに社を構えている。一階に喫茶店が入った赤煉瓦のビル内に設置されたエレベーターを上がると、目的とした扉が一つ。三回ノック。それに答えるように返事が聞こえた。パタパタと足音がした後、開いた扉の先には女性が1人。身なりからして事務員、といったところだろう。『こんにちは』と微笑むと、その女性も少し頬を赤らめながら挨拶を返す。
「武装探偵社へようこそ。ご依頼でしょうか?」
『えーと、此方に知り合いがいまして…一寸挨拶をと』
「あら、そうなんですか!お名前をお伺いしても?」
『福沢諭吉、です』
ピリ、と少し空気が変わるのがわかる。一介の社員であれば此処まで空気が変わることはない。だが呼び出したのは此処の長だ。すると、その空気を読んでか、女性の後ろから背の高い男性が顔を覗かせてきた。
「うちの社長にどういったご用件でしょうか」
『挨拶、それと一寸頼みたい事があって来ました』
「……」
『(警戒してんなぁ…)冲方と伝えて下さい。奥で待ってるんで』
何の許可も無しに社内へ侵入しようとしたのを見て、男は遮るように前へ出たつもりだった。が、まるで予測していたかのようにひらりと躱し奥にある客間室へと入り難なく腰をかける。その身のこなしに只者ではないと悟った男は、隣にある社長室へと足を運んでいった。
程なくして扉の開く音と足音が此方に向かってくる。スマホから目を外し見上げると、其処には見知った和装の男。
『お久しぶりです、福沢殿』
にこり、と微笑むが福沢は神妙な顔でAを見ている。なんだ?真逆忘れてるわけじゃないよな…と不信になっていると福沢の後ろにいる眼鏡の男も警戒が強くなる。
福「…貴兄は、歳をとらないのか?」
『………はい?』
予想を裏切る返答に素っ頓狂な声が出てしまったし、もっと言えば向こうの眼鏡の男も鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。天然恐るべし。
福「すまない、あまりに変わらない容姿に驚いてしまった…」
『はは、相変わらずですね』
福「それで、暫くこの街から姿を消していたと聞いていたが…戻っていたのか」
『えぇまぁ…実は福沢殿からある者に伝言を伝えてほしくて』
福「よかろう。して、その者の名は?」
『……太宰。太宰治』
その名を口にしたAの表情は、とても穏やかであったと福沢は静かに心内で思った。
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なに - 読みやすくて3作品夢中に読んじゃいました!すごく続きが読みたいです!一年前の作品ですがよければかいていただきたい!!! (1月1日 23時) (レス) @page34 id: 609d62ddb9 (このIDを非表示/違反報告)
三斗(トリップ願望者) - ぇ…終わっちゃったんですか・・・?続きかければ書いてください!絶対読みます‼ (2022年7月11日 22時) (レス) @page35 id: 9ad11557a3 (このIDを非表示/違反報告)
Rio - 無理はなさらずがんばってください!! (2022年3月7日 22時) (レス) @page35 id: 663ca84b4d (このIDを非表示/違反報告)
甘党 - 頑張って下さい!!更新待ってます (2022年1月22日 13時) (レス) @page35 id: 577366e2a2 (このIDを非表示/違反報告)
あの - 更新頑張って下さい!応援してます! (2022年1月7日 19時) (レス) @page35 id: 347eae7089 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まっぽ | 作成日時:2018年1月8日 23時