お荷物 ページ33
≪漣 A 視点≫
「冨岡さん…」
人混みの中、冨岡さんは倒れた私を抱き起こしてくれる
「すみません…」
そのまま手を引かれる
ちらっと後の甘味処を見ると
まだ実弥がこちらを見ていた
元気そうでよかった
実弥の元気な姿を見れて嬉しい気持ちと
実弥が自分以外の人に笑顔を見せていることに対する嫉妬がわく
でも嫉妬するなんて馬鹿みたい
自分から逃げたくせに……
人間でもないのに……
あの時、血を飲まされた
失くなったはずの腕があることが
人でなくなった証拠
気持ち悪い
記憶が戻ってから自分のすべてが気持ち悪い
こんな自分があの人の傍にはいてはいけない
だいたい実弥は優しいから
記憶のない私といてくれたんだ
私が実弥の屋敷から逃げたとき
実弥が走れば絶対に私に追い付く
そんなのわかってた
でも私に追い付かないのはきっと実弥は私を追ってこなかったから
私は実弥とってお荷物だったんだ
今だって女の人と楽しそうにしてた
好きな人なのかな
恋仲なのかな
結婚するのかな
いいなぁ
羨ましいなぁ
あの人は実弥とずっと一緒にいられるんだ
いいなぁ
ぼたぼたと涙がこぼれる
実弥と一緒にいた人が羨ましすぎて
実弥にそういう人がいたことが悲しすぎて
涙をふく気にもなれない
いつの間にか冨岡さんの家についていて
私の手をそっと離すと
「そんなに不死川がいいのか」
その言葉に今まで下げていた頭をあげる
いつもの無表情とは違い
少し寂しそうな、悲しそうな顔
なにも言わない私に痺れを切らしたのか
また口を開く
「俺は……」
私の目をまっすぐ見て
「……俺じゃ代わりにならないか」
そのまっすぐな視線に涙が止まる
続く
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作者名：りん | 作成日時：2019年11月19日 22時
