みかん色の午後 (ページ4)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:8,629 hit

4 ページ4

なんでこんなにも

穏やかすぎるほどの空気を纏って微笑んでんねん

「いやや」

「今すぐ行くし！」

俺がそう言うたら隆平は

またふんわり笑ろて

「わがまま言うたらあかんよ？」

って諭すように言うから

「わがままちゃう！」

「行くし！」

俺が続けてそう言うたら

眉毛下げて

困ったように笑うし

「それがあかんって言うんやったら･･･」

「･･･ちゃんと泣けよ･･･」

お前がガチガチに固めたつもりでおる鎧なんか

俺に言わせたら

うっすいうっすい天女の羽衣みたいで

お前のほんまの姿が透けて見えてんねん

「･･･りゅうへい･･･」

ほんまのほんまには

隆平んちに行くなんてできひん

俺かってそれくらい分かってる

分かってんねん

俺がゆっくりと名前を呼んだら

隆平の顔が歪んで

目にはみるみるうちに涙の膜が張ってきた

「りゅうへい」

「悔しい･･･なぁ」

「･･･何でこんな事なってんやろなぁ」

抱きしめてやれへん分

優しく

背中を擦ってやれへん分

甘く

口にできひん隆平の代わりに

言葉を紡ぐ