十年日記 (ページ19)

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彼女は大きく目を見開いてびっくりしていたけど

優しく笑って受け取ってくれた

それからは

僕が仕事の時も

僕が帰るよりも先に僕の部屋で

ご飯を作ってくれたりするようになった

けど

僕らはお互いに愛の言葉を囁いたことも無ければ

手すら触れ合った事は無い

この七年

誰よりも長く深い時間を一緒に過ごしたけれど

僕らの間には必ずたつがいて

微妙なバランスの中で過ごしてきた

七年前

たつが全てだった

たつしか要らないとさえ思っていた

七年前

たつと愛し合っていなければ

こんな風に彼女と過ごすことは無かった

七年前

たつがあんな目に合わなければ

僕は今もたつといれただろうか

そんな考えてもどうにもならないことを考える

でも

たつはもういない

そして

本当なら

絶対に相容れない僕らを

彼女と僕を結びつけたのは

たつに他ならない

傷をなめあうように

僕と彼女が

繰り返し交わす約束を

たつはどんな顔で見てた？

そして

今の僕を見て

たつは

「りゅうは寂しんぼさんやからな」

って

ちょっと呆れたように

それでいて慈愛に満ちた顔で

笑ってくれるかな？