耳元で歌わせて (赤) 12 (ページ13)

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少し俯いて涙堪えとる俺の目の前にココアが差し出された

びっくりしてAちゃんの顔を見たら小さな小さな声やけど｢すばるくんも｣って言うてくれて

ここが診察室前の待ち合いやってことも忘れてAちゃんが持ったまんまのペットボトルに口を寄せる

一口飲んだところでAちゃんの受診番号が呼ばれて我に返った

慌ててペットボトルの蓋を締めてAちゃんに手を差し伸べたら

自分からその手をとってくれたからしっかりと手をひいて立たせる

聴こえてへんからから病気の症状か分からへんけど歩くのもバランスが取りにくそうなAちゃんを支えて診察室に入る

智衣ちゃんも後ろからAちゃんの鞄持ってついてきてくれた

先生の前にAちゃんが座ると

綺麗とは言い難い急いで書いたような文字がぎっしりと並ぶ紙と

『突発性難聴とは』と書かれたリーフレットを渡していた

その紙を指差しながら俺らのために声にも出して説明してくださる

｢これと言った特効薬があるわけやない｣

｢症状をマシにする点滴をして安静にするしかない｣

｢聞こえるように戻るかどうかは正直分からん｣

｢けど治療にかかるのが早ければ早いほど治る確率はあがる｣

｢家に帰って安静にできるなら良いけど点滴するんに通院もしてもらわんなんし

両耳が聴こえてへん今の状態やと通うんも大変やろから様子見るためにも一週間ほど入院した方がええ｣

そぉ言われた