誕生日プレゼント2 (青) (ページ10)

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外が明るくなる頃に｢ごめんなぁ｣｢もっと一緒におったげたいけど仕事やねん｣そう言うとすまなそうに帰って行った安田さん
それからは以前より頻繁に予約を入れてくれた
それはシャンプーだけの時もあって私の様子を見にくる口実でしかないこともあった

いくつかの季節が過ぎ
ある日｢今から行ってええかな｣と突然電話をかけてきたヤスくんは
いつもより早く夕方に店にやってきた
椅子に座ったヤスくんは顔色も悪くいつもと違う固い笑顔で｢坊主にしたいねん｣そう言った

どこかで違うと思いながらも｢仕事？｣って聞き返した私に
また泣きそうに笑って｢手術すんねん｣｢頭に悪魔がおんねんて｣ってそう言った

私はその言葉を理解するのに少し時間がかかって何も言えずに
鏡越しにヤスくんの顔を見つめ続けていた
鏡の中のヤスくんの笑顔がだんだん歪んで今にも泣きだしそうになった時
私は何も言えないまま椅子の横に立ちヤスくんを抱きしめていた

ヤスくんは椅子に座ったまま私に縋ることも声を上げることも無く静かに静かに泣き続けていた

暫くしてそっと私の腕に触れて｢あかんなぁ｣｢親にも男は簡単に泣くもんやないって言われてんのになぁ｣そう言って私の体を押した

私はケースから熱いくらいのおしぼりを出してヤスくんに渡すと
｢簡単なことじゃない｣｢そういう事じゃないの？｣と言いながらバリカンを準備した