【オンエア！】好きって言わない。【輝崎千紘】 (ページ10)

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8話ページ10

巻き込んで悪かったと思ってるらしいA。
でも、俺はそれに対して言ったわけではない。

「お前だって女子なんだから…、俺のせいで顔に傷がついたのが嫌だったんだ。せっかく綺麗な肌なのに…。」

「そういうこと言うと、勘違いされちゃうよ！ぼくは引っかからないからね！もう帰る！！」

急に、座っていたベンチから立ち上がって、走り出すA。寮はすぐ近くだ。
俺も寮に帰ろうと立ち上がる。

「なんだ…？」

心臓が妙に脈打っている。なんとなく息が苦しくて、顔が熱い。
Aに触れた時のが、今になって来たのか…、
そう思って、足早に寮へ戻っていった。

Aside

「Aさん、おかえりなさい。えっ！？ほっぺた、どうかしたんですか…！？」

「猫と遊んでたら転んだだけだよ。」

「わ、私氷を持ってきます！」

ひかりちゃんに余計な心配はかけたくない。そう思ってぼくは嘘をつく。
ぼくが答える前に、ひかりちゃんが部屋を飛び出して行ってしまった。
氷なら貰ってきたんだけど…、まあいいか。
貰ったガーゼを頬に貼って、ベッドにダイブする。

顔の心配なんてされたの、初めてだった。
それに、顔も声も良いから、こんなの女子だったら恋に落ちちゃうと思う。

「いやいやいや！こんなのやってる場合じゃないよね！千紘ちゃんのばーかばーか！」

起き上がって、冷蔵庫からりんごジュースを取り出して一気に飲む。
ペットボトルから口を離すと、少し苦しくて息を多く吸う。
ふと、頬に痛みを感じて、氷を当てる。

「はぁっ、はぁ…、氷、持ってきました…。って、もう持ってたんですか…？」

「いや、いる。氷ちょうだい。頭冷やしたい。」

熱くなった顔面に、ひかりちゃんから受け取った氷を押し付ける。
今日はもう寝ることにして、布団に入ったけれど、しばらくは寝れそうになかった。