【オンエア！】好きって言わない。【輝崎千紘】 (ページ9)

今日:2 hit、昨日:5 hit、合計:6,111 hit

7話ページ9

千紘side

「お前…輝崎千紘だな！」

「え？」

俺よりも、2つか3つくらい年上っぽい男が俺の名前を呼んだ。怒りの表情を浮かべて迫ってくる。
肩を強く掴まれた。
ここは人通りの少ないところだ。周りに人は居ない。

「お前のせいで俺は…、俺たちは一気に成り下がった…。これは報復だ、二度と声優をするな…！」

「うぐっ…」

俺たちが引きずり下ろしたユニットの元メンバー。
首に手が回って、締め付けられる。
声優にとって、喉は命と同等のものだ。
抵抗するけれど、息が出来なくて力が入らない。

「ちょっとちょっと、一体なんなの？お兄さん、千紘ちゃん危ないからさ、離してくれないかな？」

「うるせぇな、邪魔すんなよ！」

バチン、という音が響く。それはAの顔を平手打ちした音だった。
でも、その瞬間に手が緩んで、俺は抜け出せることが出来た。

「げほっ、げほっ…、A、お前…！」

「お兄さん、ぼくは今なら警察には出さない。でも千紘ちゃんがどうするかは知らないよ。分かったら早く去ってくれないかな。」

「チッ…、クソがっ…！」

頬を押さえて立ち上がるA。
脅しをかけると、舌打ちをして去っていった。
俺は喉を押さえる。どうやら声は無事みたいだ。

「大丈夫？立てる？…あっ。」

「悪い、ありがとう。声は無事だった。」

差し出された手を掴んで立ち上がる。
手を取ると、Aは驚いた顔を見せた。
Aの頬は真っ赤になっていて、見るからに痛そうだった。
そういえば、今は大丈夫だったな…、触れたのに。

「ほら、これで冷やそう。」

「…いってぇ！！あの人本気で叩いたよね！？真っ赤っかだよもう…」

濡らしたハンカチを渡す。
それを頬に当てると、痛いと叫ぶA。
いくら顔出しをしていないからといっても、週刊誌に撮られたり、仕事の際の印象にも関わる。

それに、女性の顔に傷をつけられるのは気分が悪い。

「…すまなかった。俺のせいで…。」

「なーに謝ってんの！千紘ちゃん達が革命起こしたんだから、こんな奴もいるし、絡まれたりもするって。ぼくが勝手に首突っ込んだんだからさ、簡単に謝らないで。」

「そうじゃなくて！」

「えっ？」