5話 ページ7
千紘side
「千紘さん?手なんて見てどうしたんですか?」
「…いや、何でもない。」
夕方、俺は確かにAの腕を掴んだ。
女性に触れると身体が凍りついたように動かなくなる。トラウマがフラッシュバックするからだ。ひどいと倒れるくらいなのに、あの時はどうしてだ…?
咄嗟のことだったからだと思ったけど、それだけじゃない気がする。
それにこの感覚、特待生に握手されたときと似てる。
でも、こんな偶然2度もありえるのか…
よく考えると、性別を偽っていたときも、Aは一切俺に触れなかった。
・
翌朝、寮のリビングで特待生とAに会った。
「輝崎くんに吉條くん、おはようございます!」
「2人ともおはよー、これから朝ごはん?」
「そうだよ。ひかりちゃんが朝からつぶあん丼が食べたいって言ってて…。なに?なんでそんなに見てるの?」
「いや…A、ちょっと手を出してくれないか?」
おっと、無意識のうちに見ていたらしい。
Aだけでなく、ナナや特待生までもが不思議そうな顔をして俺を見る。
握手のような形で手を握ると、手首から先がすっぽりと取れた。
特待生が小さな悲鳴をあげる。
「あっ、手が取れちゃった。まぁこんなこともあるよね。」
「無いですよ!俺、一瞬本物だと思いました…」
取れたのは偽物の手で、ちゃんと本物の手はついていた。俺も驚いて偽の手を落としてしまう。
Aが嬉しそうに笑ったあと、今度は本物の手を差し出してきた。
俺はそれを握る。
「千紘さん、大丈夫ですか?」
「き、輝崎くんが青くなってます!」
触れた途端、サーッと血の気が引いて、ナナにもたれかかった。
すぐに手は離したけれど、どうやらダメだったみたいだ。
特待生も、俺が倒れないように支えてくれた。
同じ女子でも、特待生は平気なのは変わらない。
「あらら、ダメみたいだね。千紘ちゃん大丈夫?」
「大丈夫だ…。悪い、A…」
「別にいいけどさ。そういえば、ひかりちゃんは大丈夫なんだね。」
「みたいです。輝崎くんもわからないみたいで。」
俺が落ち着いた後、先に行くと言って2人は学園の方へ歩いて行った。
やっぱり咄嗟に掴んだだけだったのか。
心配するナナに大丈夫、というと俺たちも学校方面へ向かっていく。
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白玻 - 第一弾から一気に読んでしまいました!更新停止…続き楽しみにしてますね (2020年8月15日 19時) (レス) id: 27e2f649fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マグロ隊長 | 作成日時:2018年11月8日 20時