1話 ページ3
Aside
朝っぱらから先生に呼び出されるなんて、ついてないな。女子用の制服を着ろと荒木冴先生から言われた。ぼくは、女子用の制服を着るつもりなんてさらさら無い。
勝手に職員室を出て、教室へと歩いていた。
扉を開けた瞬間、出てきた誰かとぶつかりそうになり、咄嗟に右へと動いた。
衝突は回避できたが、相手も驚いていたようだ。
「うわっ、びっくりした…。千紘ちゃんか。」
「あ、ああ。おはよう。」
ぶつかりそうになったのは、千紘ちゃんだった。
慌ててぼくから距離を取る。
それもそのはず、千紘ちゃんは女性が苦手らしい。
ぼくが女の子だと知ってから、何となく距離が置かれている気がする。
特待生のひかりちゃんは大丈夫みたいだけど。
ぼくは、特に気にせず授業の準備を始めた。
一時限目はダンスレッスンだ。
着替えを持って、更衣室に向かう。
他のクラスメイトたちも、ぞろぞろと更衣室へと歩いて行った。
「わっ!?A、ここは男子更衣室だよ!」
「あっ、ごめんごめん。間違えちゃった。みんなの良い身体を見たくってさ。…嘘だけど。」
扉を開けると、光城ちゃんが驚きの声を上げた。
中には着替え途中のクラスメイトがいた。
ぼくも、ついこの間までは一緒に着替えてたけど、女子ってバレた以上は別で着替えないとだよね。
更衣室を間違えたのは本当だったけれど、ぼくはその後、ほぼ使用されていない女子更衣室で着替えた。
「じゃあまずストレッチ。ペアでやれよ〜。」
担当は冴ちゃんだった。
ぼくは、誰か余ってる人はいないかと辺りをきょろきょろ見回した。
すると、1人の生徒と目が合った。
「余ってるのは…俺たちみたいだな。」
「そうみたいだね。ところで、千紘ちゃん大丈夫?女の人が苦手なんでしょ?ぼくがペアで倒れたりしないでよ。」
余ったのは、ぼくと千紘ちゃん。仲のいい雛瀬ちゃんは仕事で居ないみたいだし、千紘ちゃんは余ってしまったようだ。
明らかに苦手そうな顔をする千紘ちゃん。
ぼくは振り返って、
「まぁいいよ。冴ちゃんとペア組んだら?」
「A、どこ行くんだ?千紘とペアだろ。」
「お腹痛いから保健室行きまーす。あとはよろしくね、冴ちゃん。」
冴ちゃんにそう言ってレッスン室を出て行った。
出るときに見えた千紘ちゃんの顔は、ほんの少しだけ寂しそうというか、悲しそうな顔をしていた。
20人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
白玻 - 第一弾から一気に読んでしまいました!更新停止…続き楽しみにしてますね (2020年8月15日 19時) (レス) id: 27e2f649fa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:マグロ隊長 | 作成日時:2018年11月8日 20時