29話 ページ31
「ちょっと待て!彼女ってことは…」
「そ。ぼくは20年以上前の女子生徒。続けるよ。」
・
・
いつのまにか、わたしは道路に立っていた。
ぼくの人生が終わった場所に。
でも制服は一切汚れていない。スカートも破れていない。
一体何が…、わたしは死んだはず。
通りすがりの人に聞く。
「あの、すみません…」
「…」
返事はない。ふと、店の方に顔を向ける。
窓に反射してうつったものは…
いや、何もうつっていなかった。
わたしはそこで、ようやく死んだ実感が湧いた。
そして泣いた。大声を出して、地面に座り込んで。
嘘だ、こんなのは何かの間違いだ。
わたしはまだ、夢を叶えてないのに。
まだまだやりたいことが山ほどあったのに。
誰にも認識されないまま、1年時が過ぎた。
全然気に留めていなかったが、いや、そんな余裕が無かったからか、わたしの時代とはかなり変わっていることがわかった。
新聞を見ると、20年以上時が経っている。
街の大きなモニターに、1つの声優グループがうつった。
「あいつら…」
わたしが所属していたユニットのメンバー達だ。
すっかりレジェンドになっている。
あんなにも楽しそうに、声の仕事をしている。
嬉しいと思う反面、多少の嫌悪感が湧いた。
そして、再び泣いた。
人が行き交う交差点の中央、わたしの身体をすり抜けて歩いていく多くの人。
せめて、今の宝石ヶ丘がどうなっているか気になる。それだけ見に行こうと思い、1歩進んだ。
「おい、気をつけろ…。宝石ヶ丘の生徒か。」
「えっ?」
サラリーマン風の男性が、わたしの肩にぶつかった。
一言文句を言うと、そのまま歩いて行ってしまった。
わたしは大急ぎで交差点を抜ける。
近くのカフェの窓を見る。
そこには、制服を着たわたしがうつっていた。
なぜうつるようになったのかはわからない。けど、そんなことはどうでもいい。
人通りの少ない路地裏に入る。
荒くなった息を整えると、壁に手を置く。
「生きてる…?いや、それは無いか…。」
ただ、今ここにわたしが存在していることが重要だ。
なぜ急に存在するようになったのか、それが頭をよぎるけれど、どうしても、わたしは夢を諦められなかった。
偶然、服屋の裏に宝石ヶ丘のズボンが捨てられていた。わたしはそれを拾うと、スカートから履き替えた。
本当の名を名乗るのはまずい。
もう一度、あの学校へ入るんだ。
持っていた鞄に、ブレザーを押し込むと、わたしは歩き出した。
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マグロ隊長 - 亜紀さん» 読んでいただきありがとうございます!続編というか、ただこの夢主ちゃんで恋愛的なのを書こうと思っただけなんですけどね…笑椿くん良いですね!これから考えてみます(^_^*) (2018年11月6日 23時) (レス) id: ff77c9afb9 (このIDを非表示/違反報告)
亜紀(プロフ) - 私は個人的に椿が好きなので絡ませて欲しいなと(((殴、コホン…なんでもありません。最後になりましたが応援します、頑張ってください!! (2018年11月6日 18時) (レス) id: 65d880c966 (このIDを非表示/違反報告)
亜紀(プロフ) - 最後まで読ませていただきました。いやぁ、私結構僕っ子好きなんですよね、だから嬉しかったですよ夢主が僕っ子で!続編?書いてくださるんですか!?ぜひ読ませてください!! (2018年11月6日 18時) (レス) id: 65d880c966 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:マグロ隊長 | 作成日時:2018年9月28日 1時