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あげない68 ページ25

帰ってきたAに僕は声をかけた。


「遅かったね、A」

「ちょっとね、いろいろあって」

そう言いながら乾いた笑いをこぼした。


この間とはなんだか雰囲気が変わっているのがわかった。

本当にからっとしてて、すとんと重いものが落ちた感じ。

それを下ろしてあげられなかったのが、自分じゃないことが妙に悔しく感じられた。


「いろいろって、なにかな?」

じっと、彼女の目をまっすぐに見つめて言う。


「学院ね、大きいイベントがあって、だから忙しいの。遅くなっちゃった」

どうやら、倒れたことも言うつもりは無いらしい。

心配もさせてくれないのかな。


「へえ……」


どうにも、胸が苦しい。

なんだか息が詰まりそうだ。

僕は頼りないのか、信頼にあの佐賀美陣より欠けるのか。

どちらにしても、寂しくて悲しいだけだった。


彼女がゆっくりと近づいてくる。

もう寝るように、と促される。


その細い手首を掴んで、思わずAを引っ張った。


ぽすんと、ベッドに倒れ込んだ彼女は目を丸くしている。


「隼君、どした、の?」

驚くAの顔の左に手をついた。


「Aは」


どうして僕を頼ってくれないの、と言いそうになったのを何故か止めた。


「Aにとって、僕は、頼りないかなあ……?」


自分でもひどく情けない声だと思った。

きっと顔も情けないものだと思う。


顔を合わせるのがなんだか切なくて、思わず、顔を合わせないようにした。

「ねえ、A、僕には心配もさせてくれないの?」

「僕には、頼ってくれないの?」

「僕は」


君の一番でいたいのに。


それは声にならなかった。


「ねえ、A、教えてよ」


僕は君を全部知りたいよ。

助けてあげられないのは、もうこんなに悔しい思いを、寂しい思いをするのはゴメンだ。

誰かに彼女を助ける役割を取られたくなかった。あげたくなかったのに。


そんな思いを伝えることは出来ずに、ただAに抱きついた。

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設定タグ:ツキウタ。 , あんスタ , 霜月隼   
作品ジャンル:恋愛
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ゆうくんのストーカーのストーカー - す、すごいとこで止めるじゃねぇですか...面白いです!更新頑張ってください!無理の無い程度で良いので! (2018年4月8日 6時) (レス) id: c392d9b03c (このIDを非表示/違反報告)
凖様大好き - 面白かったです!続き待ってます。 頑張ってください! (2017年8月4日 14時) (レス) id: 3dc5b5c194 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しらうお。 | 作成日時:2017年3月21日 0時

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