後悔の記録157 ページ13
無骨なエレベーターに二人黙して乗車する。
「高橋といったな。俺は織田作之助だ」
切り出したのは織田作だった。
現代の富岡義勇である彼は全く感情が読めないが、きっと彼の中のモノローグでは饒舌に私のことを語っているのだろう。(その通りである)
「高橋Aです。……その、一緒に任務にあたるうえで聞きたいのですが、坂口情報員とは知り合いなんですか?」
「ああ。住まいは確かホテルだった」
「所在、こちらで調べましょうか」
「いや、いい。知っている。早速で悪いが、今から行こう」
「わかりました」
ここ一番の演技どころだった。なんせもう黒の時代の物語を歩んでいるんだ。
私は坂口安吾と会ったこともないはずだし、織田作を織田作とも呼ばないし、ましてや太宰さんたちが三人で飲んでいるなんて知る由もない『はず』なのだ。
うっかり彼を織田作なんて呼んでしまえば、あの太宰さんをも泣く寸前の赤ちゃんと化してしまう伝家の宝刀『俺を織田作と呼ぶな』が飛んでくることはもはや自明。
「先に連絡してホテルの鍵もらえるようにしておきますね」
「頼む」
「いえ。道案内お願いします」
だから私は、ホテルで織田作の独り言をアニメ見るオタクみたいにシャドーイングしてもいけないし、織田作より先に狙撃を避けてもいけないし、袋小路で待ち伏せしているはずのミミックたちを回避してもいけないし、後ろから大量に銃撃されるとしても『織田作かがめ!』と言われる前にかがんではいけない。
つまり、命をかけた縛りプレイである。
「(四六時中猫被る仕事、しんど〜〜〜〜)」
黒の時代のメインキャラは太宰治と織田作之助。
このストーリーにおいて、私の本性を知る者はすべからく脇役である。
つまり、普段志賀と暴言飛ばしあいながら好きに動いて解決する仕事よりも何倍も神経を使い、何倍も難易度の高い任務であるということだ。
「(癪だけど、中也さんと志賀が恋しい……)」
坂口安吾のホテルを前に、私はうなだれた。
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黒灰白有無%(プロフ) - 創作伽羅が出て来るのは余り読まなかったのですが此の創作伽羅達2人と夢主は超好きです,物語も本当に好みのモノで大好きな作品です!!原作沿いの続きも楽しみにしてます!!気が向いたらで構いませんので更新仕手下さると嬉しいです!!是からもずっと応援しております (9月28日 4時) (レス) @page16 id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
奏(プロフ) - 初めまして。凄く面白くて好きです!続き待ってます!!! (9月25日 4時) (レス) @page16 id: 872e19f483 (このIDを非表示/違反報告)
凛(プロフ) - 一気に読んでしまいました!とても面白く、太宰さんが冷酷という設定は珍しくオリキャラも非常に好きです!先の展開が待ち遠しいです。これからも頑張ってください。勝手ながら応援してます! (9月10日 2時) (レス) @page16 id: 4386aff6fa (このIDを非表示/違反報告)
朱雨 - 大好きです。僕の文スト夢傑作集に新しく入るほどまっっじでおもろいです。どうやったらこの好きさを伝えられるか……更新待ってます! (7月14日 13時) (レス) id: c4ce57e384 (このIDを非表示/違反報告)
アオリンゴアメ - めっちゃ好きです!これからどんな展開になっていくのか楽しみで仕方がない…太宰さんがどう変わっていくのか気になりすぎてうずうずしてます笑更新待ってます!! (7月9日 11時) (レス) @page16 id: 276a6da939 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:メガネ第2号 | 作成日時:2022年8月28日 5時