最年少幹部部下となりました ４冊目

後悔の記録１５６ ページ12

知っている私だから安心してこの場にたたずんでいるが、常人なら肝を冷やして織田作の顔を二度見しているところだろう。



「ハハッ、いいだろう」

首領は目を丸くして、そうして苦笑した。
モノローグ通り、まるで出来の悪い生徒を叱るようだった。


さて、このシーンはここで暗転だ。これで外に出れると思って、我先にと扉へ向かう。

「高橋君」

しかし、首領が『そういえば』と私の名前を呼んで引き止めた。

｢(急な名指し！！怖い！！)｣

　完全に油断してた私は、『あ』だの『え』だのオタクのようにどもって、そうして混乱のすえに軍警のように敬礼した。ちなみに職業はマフィアです。

「な、なんでしょう」

「太宰君から話は聞いてるよ。とても優秀な部下だと」

「(嘘だ……)」

「君の話をする太宰君は実に楽しそうでね」

「(絶対嘘だ……)」

「俗にいう裏返しってやつなんだろう、口では使い捨ての駒なんて言ってるけど」

「(それはマジだ……！！！)」

アイツならやりかねない。
首領の話を聞く私の神経が、多方向からすり減っていく。

ひいひい言っている私の内心に気づいているのかいないのか、首領はその慧眼で私を見て、ふむ、と見定めるように顎を引いた。


「ところで」
「……」
「君の異能力は、誰かから譲り受けたものかな？」
「？ ……いえ、」


当然と言えばそうだが、首領は異能力の譲渡の話を知っているらしい。
しかしその件に関して私は無関係だ。


「記憶の限りでは私自身の異能力ですが……」

異能力、雪月花。能力内容は、魂の具現化。
私としては、これがそも異能力なのかどうかも分からない、というのが正直なところだった。


かつて太宰さんには分かりやすく魂の具現化などと説明したが、きっとこれは魂魔術だ。
しかし太宰さんの無効化は効く。
でも私は文豪でもない。

つまり、実のところを言えば、私自身もまだこの異能力についてよく分かっていないのだ。

首領は私をじっと見て、

「そうかい」

とだけ返した。

相手は太宰さんの師(？)でもありポートマフィアの長。
今の会話になんの意味が込められているか、考えたところで無駄である。

一介の構成員の私は、大人しくはいと返事した。

「では行きえまえ」

────善き便りを期待しているよ。
首領のその言葉を最後に、私と織田作は静かに部屋から退出した。

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