苦労の記録148 ページ1
そして屋上に残されたのは、すべてを察した雪也先輩と、志賀、私の三人。
屋上の柵に寄りかかって、力なくずるずると座り込んだ雪也先輩に、志賀が『灰色の月』と呟いた。
「悪いけど拘束させてもらいますよ〜。」
水色の光を反射した氷が、雪也先輩の胴体をぐるぐると取り囲んで屋上の柵に固定していく。
手足は自由だが、逃げることはできない。好きにしての意味で、彼は片手をひらひらと揺らした。
「さっきインカムで回収役呼んどいた。爆弾の停止を確認次第向かうってさ。」
「はー……どうなることかと思いましたよ、本当。」
ようやく息がしやすくなったと、志賀も地べたに座り込んだ。倣って私も座ろうとしたら志賀に止められた。ミニスカで座るなということらしい。気にせず座った。
「……志賀の作戦聞いた時は、絶対失敗すると思ったけど。」
「まあ、さすがに僕も一か八かでしたね〜……。」
私の名前を出して揺さぶれば、雪也先輩は解除コードを教えるはずだ。切羽詰まったあの状況で、志賀はそう説明した。
正気を失ったのかと思ったが、真剣な表情に気おされて、どうせ死ぬならと、私はこの作戦に乗った。
「雪也ってAのこと好きなんですか?」
沈黙を破って、志賀が馬鹿正直にそう聞いた。私が思っても聞けなかったことを迷わず聞くもんだから、ちょっと、と咎めようとしたときに、雪也先輩が遮った。
「好きだよ。」
「えッ。」
即答だった。
誤魔化しようのない告白に、開いた口がふさがらない。どう返答しようかと、少し悩み始めたところで、雪也先輩がくつくつと笑う。
「生きててほしいっていう、親愛寄りの意味でね。」
「ああ、そういう……。」
「あはは、……面白い反応が見れたな。」
なぜか私ではなく、志賀を見てそう言うものだから、彼の発言の意図が分からず首を傾げた。
「でも本当だよ。多分俺は、何があっても、『君』には死んでほしくない。これからずっと。さっき気づいたんだけどね。」
「……なんでですか?」
かすかに目を伏せた雪也先輩に、私は小さく質問した。会って日が浅いのに、そこまで情を抱かれることをした覚えはない。
雪也先輩はゆるりと視線をこちらによこして、小さく笑った。
「妹に似てるんだ。」
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黒灰白有無%(プロフ) - 創作伽羅が出て来るのは余り読まなかったのですが此の創作伽羅達2人と夢主は超好きです,物語も本当に好みのモノで大好きな作品です!!原作沿いの続きも楽しみにしてます!!気が向いたらで構いませんので更新仕手下さると嬉しいです!!是からもずっと応援しております (9月28日 4時) (レス) @page16 id: 1ab55170b6 (このIDを非表示/違反報告)
奏(プロフ) - 初めまして。凄く面白くて好きです!続き待ってます!!! (9月25日 4時) (レス) @page16 id: 872e19f483 (このIDを非表示/違反報告)
凛(プロフ) - 一気に読んでしまいました!とても面白く、太宰さんが冷酷という設定は珍しくオリキャラも非常に好きです!先の展開が待ち遠しいです。これからも頑張ってください。勝手ながら応援してます! (9月10日 2時) (レス) @page16 id: 4386aff6fa (このIDを非表示/違反報告)
朱雨 - 大好きです。僕の文スト夢傑作集に新しく入るほどまっっじでおもろいです。どうやったらこの好きさを伝えられるか……更新待ってます! (7月14日 13時) (レス) id: c4ce57e384 (このIDを非表示/違反報告)
アオリンゴアメ - めっちゃ好きです!これからどんな展開になっていくのか楽しみで仕方がない…太宰さんがどう変わっていくのか気になりすぎてうずうずしてます笑更新待ってます!! (7月9日 11時) (レス) @page16 id: 276a6da939 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:メガネ第2号 | 作成日時:2022年8月28日 5時