苦労の記録8 ページ8
あの後私は魔都ヨコハマの夜景に見惚れる間もなく、あれよあれよとポートマフィアのビルに連れてかれた。
そのみすぼらしい格好をどうにかしてと仕事着としての一張羅を渡されたあと、私がする仕事の内容を大雑把に説明された。めちゃくちゃ簡単に言うと、『太宰さんのお手伝い』らしい。
先行きに不安を感じる暇もなく説明は終わり、今度はカードキーを渡された。ここに住めということらしく、私は本当に衣食住は提供してくれるのかと心の底から安心した。
「あ、ありがとう、ございます。」
「必要なものは多分家に全部あると思う。じゃあ、私は首領に報告してくるから。」
君は帰っていいよ、と私のお礼を綺麗に無視して、その場から太宰さんは去っていった。カードキー片手にしばらく呆けたあと、私はようやく私の家らしい場所に向かい始めた。
「(…………本当にヨコハマに来たんだ。)」
ポートマフィアビルに来る時はよく見れなかったヨコハマの美しい夜景に、私は別世界に来たことを痛いくらいに実感した。
*
*
ポートマフィアビルの最上階。仰々しい態度の黒服を横目に太宰は首領──森鴎外──と対面した。
「真逆太宰君が私に頼み事とはねぇ。」
珍しいね、とうっそりとした微笑みをたたえた森がそう言えば、太宰は『頼みだって?』と小さく嘲笑った。
「首領は何か勘違いをしています。これは提案です。彼女は必ず……ポートマフィアにとっての力になる。」
「ふむ。……その根拠は?」
こうも断言されると粗を探したくなる。森鴎外はべつに断る気も無かったのに、意地悪な質問をした。太宰はその質問をまるで予想してたかのように、顔色ひとつ変えずに答える。
「それは彼女の………異能ですよ。」
その発言は、少しの嘘が含まれていた。太宰は異能だけではなく、Aの目に惹かれたのだ。陳腐な言い方だが、人を引き込むような、何かを期待させるような、不思議な光を持った瞳だった。
その嘘に気づいたのか気付いていないのか、森はふうんと頷いて、また微笑んだ。
「……太宰君がそこまで言うのは、矢張り珍しい。
いいよ、許可しよう。彼女の肩書きは
────幹部直轄の部下だ。」
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ブラコン - かっかッこいいっ兄に思わず抱きつきましたぁ〜。ぶたれたし、抱きつきたくなかったよ〜!けどけど、イラストがッ! (2018年7月21日 22時) (レス) id: e9f72c513a (このIDを非表示/違反報告)
杏 - めっちゃおもしろいですね! 殺せば、勝ちなんだのところ吹きましたwww 渚君www (2018年7月4日 0時) (レス) id: 636a061378 (このIDを非表示/違反報告)
いんこ - 37ページの下らへんに中也のとこで「だうしな」になってます (2018年1月29日 16時) (レス) id: 4376bf785f (このIDを非表示/違反報告)
信乃(プロフ) - イラストかきました。どぞ→ http://uranai.nosv.org/uploader/common/7/6/8/768eaacc1415e24c7349773e07126187.jpg (2018年1月27日 19時) (レス) id: 3baa51b5a2 (このIDを非表示/違反報告)
自殺嗜好(プロフ) - めっさお気に入りです!夢主ちゃんのリアルな突っ込みが気に入ってます!これからも頑張ってください! (2018年1月25日 11時) (レス) id: f37f9cdf35 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:メガネ第2号 | 作成日時:2017年12月31日 19時