苦労の記録31 ページ31
「ッは〜〜〜……生きてる……。」
「大袈裟だな。」
やっっと異能を解いてくれた中也さんは脱いでいた外套を拾った。
「今日はこれで終いだ。今ので体訛っただろうしな。」
「(お前のせいだよ、分かってる?)」
重力からの解放という自由を手に入れ、肩をゴキゴキ鳴らす。ふと疑問に思ったことがあったので、あの、と中也さんに話しかけた。
「……あの、」
「あ?」
「太宰幹部の頼みとはいえ、なんでたかが一介の構成員にここまで構うんですか?」
素朴な疑問だった。入ったばかりの一介の構成員なのにこんなに原作キャラと喋れるんだろう。ロマンス小説ならありそうだけど、ここはそんな甘ったるいもんじゃないのは太宰との会話で思い知らされた。
普通は原作キャラの歴代最年少幹部様の相棒となんて喋れる筈が無いのだ。小説にもあったように。
悶々としていると、中也さんが何言ってんだ此奴、みたいな顔をした。
「一介の構成員じゃねぇだろ?」
「……えっ?」
「歴代最年少幹部様の直轄部下。そこらの構成員より、地位は上だ。妬まれるだろうが気をつけろよ。」
ストン、と胸のつっかえが落ちる。
そうか、太宰の部下。字面だけだと一見普通そうだが、ポートマフィアの幹部の直轄部下となると話が違う。連絡を1ヶ月前からしておかなければ会えぬ存在、それが幹部だ。その専属の部下、確かにそこらへんの構成員より、地位は上だ。中也さん直々の指導も頷ける。
ひとり納得していると、帰ろうと出口に向かっていた中也さんが思い出した、とでも言う様に此方へ踵を返した。
「そうだ、携帯持ってるか?」
「……と、いうと。」
「あー……あれだ、連絡先寄越せ。」
中也さんと、連絡先交換。「向こう」では考えられないな、とコッチの世界に来てしまったことを実感した。
「携帯ですね、ちょっと待ってください。」
買ったばかりの携帯を取りだし、赤外線通信をする。
一番最初の連絡先だ。ゴリラと設定してあげよう。
「変な設定にすんなよ。」
「えっ、野生の勘……。」
あっ、やばい。墓穴を掘ってしまった。焦って中也さんの様子を探ると、案外気にしてなかった。
「いつか殺すぞ手前。」
そんなわけなかった。
「(でも、なんだ、意外と平気そう。)」
生まれて初めて、意図的に他人に猫被りを外したかもしれない。なんだかむず痒かった。
「ん。じゃあまた今度な、日程連絡するわ。」
と、中也さんは今度こそ本当に帰っていった。
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ブラコン - かっかッこいいっ兄に思わず抱きつきましたぁ〜。ぶたれたし、抱きつきたくなかったよ〜!けどけど、イラストがッ! (2018年7月21日 22時) (レス) id: e9f72c513a (このIDを非表示/違反報告)
杏 - めっちゃおもしろいですね! 殺せば、勝ちなんだのところ吹きましたwww 渚君www (2018年7月4日 0時) (レス) id: 636a061378 (このIDを非表示/違反報告)
いんこ - 37ページの下らへんに中也のとこで「だうしな」になってます (2018年1月29日 16時) (レス) id: 4376bf785f (このIDを非表示/違反報告)
信乃(プロフ) - イラストかきました。どぞ→ http://uranai.nosv.org/uploader/common/7/6/8/768eaacc1415e24c7349773e07126187.jpg (2018年1月27日 19時) (レス) id: 3baa51b5a2 (このIDを非表示/違反報告)
自殺嗜好(プロフ) - めっさお気に入りです!夢主ちゃんのリアルな突っ込みが気に入ってます!これからも頑張ってください! (2018年1月25日 11時) (レス) id: f37f9cdf35 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:メガネ第2号 | 作成日時:2017年12月31日 19時