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苦労の記録4 ページ4

気の所為だろうか、いつもより足が軽い
その上まだ疲れてない、多分先月の強歩大会の時より長い区切りのペースで走れてる

ひょっとしたら逃げ切れるかもしれない、と思い私は足を回す速さを上げた。後ろの警戒が針で指すように突き刺さった
前が暗い、何も見えない。走りながら思う、私は何処に向かって走っているのだろう。若しかしたらこのまま最後には捕まってしまうのだろうか。そして、そして───

ぞくっと悪寒がした。言い様もない不安が私を襲う。それ自体も堪らなく嫌で、頭を思いきり振って、前の暗い闇を睨みつけた


「捕まってたまるか」


汗が頬を伝うのを感じた。久しぶりに私、凄く一生懸命だ。命をかけるって、文字通り今を指すのかも。現に今走るのに命がかかってる


───だからほら、


今が夜なのは分かってた、前を見ても横を見ても後ろを見ても殆ど真っ暗なのも分かってた。
勿論、こんなに走り回ってたら何かに突っかかる事もあるかもしれないと分かってたのに



横道をそれようと体を逸らしたが、突如景色が転がった。

「あっ!」

転ぶ、と思った瞬間にはもう地面が目の先にあった。右頬をぶたれる衝撃があり、石がが突き刺す痛みが広がった
早く立ち上がらなきゃ…!と手を地面について身を起こした時、後ろで銃をリロードする音が聞こえた。こんな音、聞きたくなかった



───走らなきゃ、命がなくなっちゃう


もう終わりなのかな、信じられない
Aはこれは夢なんじゃないかと思った。夢であってくれと望んだ。

こんな、意味の分からないまま死にたくない…!
目が潤んでくるのを感じる。視界に映る目の前の銃を持つ人間が曇った硝子越しのように歪む
悔しさと悲しさと混乱とでぐちゃぐちゃの頭の中で、心の底で、Aは思った。せめて、私に倒す力があったなら…。だがそんな希望は叶うはずがない。幼い頃から剣道、弓道、柔道数々の稽古をしてたけど、弓も刀もナイフも無い今、私には何か出来る術はない


「お前は何処の回し者だ」

「スラムの住人じゃねぇか?」

「服ボロボロだしよ」


目の前の人間達が話す事などもう頭に入ってこない、喧騒の中のラジオみたいに薄らぼんやりとしか聞こえない


死にたくない、死にたくない…!
そればかりを繰り返す私は、もう泣く寸前だった
しかし、とうとう涙が瞳から零れ落ちるかという所で、私は突然目が開けられなくなった

「?!」

「ぐ…っ!」

「なんだこの光?!」

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ブラコン - かっかッこいいっ兄に思わず抱きつきましたぁ〜。ぶたれたし、抱きつきたくなかったよ〜!けどけど、イラストがッ! (2018年7月21日 22時) (レス) id: e9f72c513a (このIDを非表示/違反報告)
- めっちゃおもしろいですね! 殺せば、勝ちなんだのところ吹きましたwww 渚君www (2018年7月4日 0時) (レス) id: 636a061378 (このIDを非表示/違反報告)
いんこ - 37ページの下らへんに中也のとこで「だうしな」になってます (2018年1月29日 16時) (レス) id: 4376bf785f (このIDを非表示/違反報告)
信乃(プロフ) - イラストかきました。どぞ→ http://uranai.nosv.org/uploader/common/7/6/8/768eaacc1415e24c7349773e07126187.jpg (2018年1月27日 19時) (レス) id: 3baa51b5a2 (このIDを非表示/違反報告)
自殺嗜好(プロフ) - めっさお気に入りです!夢主ちゃんのリアルな突っ込みが気に入ってます!これからも頑張ってください! (2018年1月25日 11時) (レス) id: f37f9cdf35 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:メガネ第2号 | 作成日時:2017年12月31日 19時

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