手品２ ページ3
二人は、俺が近付くことでやっと存在に気付いたようだ。
チビがハッとした顔になり何か言おうとするが、「ちわス!」というデカの挨拶にそれを遮られ、慌てて挨拶をしてくれる。
なんだろう、なぜか笑けてきてしまった。
「おー。さっきから見てたよ」
「見てた……?」
「あ、あのっ! 先輩もバレー部ですかっ」
「オイッ」
「な、なんだよっ! 」
デカが警戒するように俺を見てくる。
あれ、そんな危ない雰囲気出してるかな?
「そんな警戒すんなよ。俺もバレー部だよ。後輩いびりとかしねぇし」
何かをやらかして追い出されたのだろう後輩をちょっとからかってやろうと思っただけだ、とは言わないでおく。
それでも警戒を解かないらしいデカを一旦置いといて、俺はチビへ目を向ける。
「んで、さっきから何か言いたげだったけど、俺に何か用?」
「あ! えっと、先輩に俺達を入れてもられるように―――」
「却下」
「え……?」
「言ってほしい」と続くはずだっただろう口からは、代わりに困惑の声が出た。
そりゃあ、こんな即座に否定されるとは思わなかったろう。
俺は言葉を続ける。
「多分俺が言ったところでこの処遇は変わらないと思うよ。俺にそんな権力ある訳じゃないしね。それに、この現状は君たちに何か非がある故だ。それを改めない限りは、部活参加は難しいんじゃないかな」
「うぅ……」
項垂れたチビを、デカが睨みつける。
うん、その “非” は明らかだけど、俺がそれを教えたんじゃあ意味がない。
「てことで、まぁ頑張って」
「えぇ!? な、何かありませんか? なんかこう、入れてもらえる効果的な方法とか!」
「んー……じゃあ、ヒントをあげようか」
チビの顔がパァっと明るくなる。
これにはデカも食いついた様子。
俺は得意のスマイルを浮かべ、ポッケからハンカチを取り出した。
首を傾げる観客を横目にハンカチを広げて、裏表を見せる。
それを開いた左手に被せ、右手で少しつまみ上げる。もちろん中には何も無い。
「one、two、three!」
「「…………えっ……!?」」
いい
俺はほくそ笑んで、驚愕の表情で固まる二人の方へ突如左手に出現したバレーボールを投げてやる。
咄嗟にチビがキャッチしたものの、その顔は相変わらず驚きに満ちている。
「それじゃ、期待してるよ」
ポン、と高さの違う二つの頭を叩き、俺は体育館へと姿を消した。
さ〜て、どんな答えを導き出すかな。
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狐猫音。(プロフ) - 今までに見たことがない作風と内容がとても面白いです！これからも更新頑張ってください。応援しています。 (2019年2月10日 17時) (
レス) id: 1402817ddd (このIDを非表示/違反報告)
チーズタルト - 続き楽しみにしてます！頑張ってください！！ (2018年12月30日 20時) (レス) id: 6500d8f78f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：音々 | 作成日時：2016年8月14日 20時
