6 ページ7
「…ゥゥゥゥゥ、ミャヴッ！！！！！！」
唸りに唸ったあと猫は、ようやく僕に飛びかかってきた。(「ようやく」とは言っているが、別に飛びかかってくるのを待望していたわけではない！！！)
「…っ、くッ！」
僕は体を捻ってなんとか攻撃を避けた。異様に俊敏だ。この猫、やっぱり普通じゃない。
「ミャヴッ！！！ヴ、ヴルルルルゥ…！」
飛びかかった勢いで着地をし損なった猫は、体を強く地面にぶつけた。そして心底悔しそうにこちらを睨む。(逆恨みどころではない)
僕はこの隙に逃げようとしたものの、そうは問屋が卸さないと言わんばかりに再び猫は飛びかかった。
「ミャ、ミャォォォヴン！！！！！」
雄叫びみたいだ…猫なのに。なんて呑気なことを考えている余裕があるのは、僕が変な奴だからなのか。
再び僕は右方向に避けた。が、今度はタイミングが遅かったらしく、猫の爪が僕の左頬に掠った。痛い。僕は顔を歪めた。
「…ッ、どうしよう…」
ベルさんの助けを待つか？でもあの人、そもそも気づくのか？
猫は再び飛びかかる。今度こそ僕は避けることができず、猫パンチ(字面はコミカルだがそんな優しいもんじゃない)をモロに食らった。
「ぐぁっ…う…！」
「ミャー！ミャゥゥゥゥゥッ！！」
猫は自分が優勢になったことを察したのか、嬉々としてこちらにまたもや飛び込んでくる。
「ごふっ……う……」
連続猫パンチだ。痛い。しかし顔を歪める気力すらない。だんだん意識が朦朧としていく。
死ぬのかな、と思う。こんなところで。自分のことも、世界のことも、何もわからないまま。
何も、失ったまま。
涙が溢れてきた。痛みによるものではなかった。ふとベルさんの顔を思い浮かべた。この状況下で、僕に取っての希望とも言える存在。唯一の突破口だった。
朦朧としている視界の中、猫が此方に向かってくるのが見えた。多分あれを食らったら致命傷だ。
僕は、譫言のように呟いた。願望というか、ただと妄言とも言えるセリフだった。
…た、すけて。ベル、さん。
「…やれやれ、悪い猫ねぇ。
私の使用人を虐めてあげないで頂戴？」
「あっ…」
「やけに遅いと思ったら…遅かったのは私の方だったのね。早く助けに来れなくてごめんなさい」
助けに来てくれた。僕の主人が。
ベルさんが、助けにきてくれた。
「《火の粉》…発動」
ベルさんが杖を構えると、その先から小さな火の玉が放たれた。
そして、猫に直撃し…炎上したのだった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品が参加のイベント ( イベント作成 )
この作品が参加のイベント 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
葛 - Kirariさん» 感想ありがとうございますっっ！！！応援に応えられるように執筆がんばります！！！！！ (2021年2月24日 17時) (
レス) id: 882ef10c58 (このIDを非表示/違反報告)
Kirari - 人物の一人一人が、みんな個性的で、すごくおもしろかったです！！最初の主人公くんが落ちてきた、ってところも好きです！！これからもがんばってください！応援しています！ (2021年2月23日 13時) (レス) id: 659499b88d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：葛 | 作成日時：2021年2月10日 21時
