第十舞『悲壮なる心憂』 ページ10
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『今日、早いんだな』
まだ暗い早朝、寝起きの掠れた声で云うのは、金髪の少年だった。
『あぁ』
『あ、髭剃れって昨日云ったのに…ったく』
布団から出て来た少年は、十四歳位か。
『絶対何か買って食って仕事行けよ。俺も後から行くから』
心配する少年の頭を、彼はわしゃわしゃと撫でた。
赤い髪の、長身の男性だ。
『優しいな、お前は』
『わ、な…早く行け…!』
少年の反応を見て微笑んだ彼は、次いでに寝ている子供達の頭も撫でようとした。
『待て待て!起きたら大変だって、任務前に仕留められる』
『安心しろ、まだ勝てる』
少年が彼を引っ張り、それを止める。
『はいはい。じゃあ今度は俺も混じってあんたを仕留めてやるから。仕事、行け!』
『それは怖いな』
彼は素直に、仕事に行こうとする。
『じゃあな。行ってらっしゃい、作之助』
____守れなくてごめんなさい。
俺が居ながら、皆を守れなくてごめんなさい。
頭の上に、手を置かれた感触がした。
『お前のせいじゃない。良く、生きて居てくれた』
____行くのか?
駄目だ、行ってはいけない。
『お前は…太宰の側近だったな。それなら、ひとつ…頼みたい事がある』
何でも聞こう。それが、最期と云うならば。
『彼奴は、ただの子供だ。お前と同じ様に。救ってやってくれ。お前には…その力がある』
………判った。必ず。
『行って来い、作之助』
涙は堪えて、ただ…何時もの通りに。
『有難う、アイザック』
彼の背中が、小さくなっていく。
雨が降っていた。
目から落ちるこの生温い水は、雨に違いない。
雷が激しくなっていた。
この肩の震えは、雷に驚いたものに違いない。
ならこの感情は____、一体何だと云うのだ。
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目尻に違和感を感じ、アイザックは目を覚ます。
また夢を見ていた。
目尻に触れると、大粒の涙が指についた。
「何だ、これ…」
思い出せない。人と云うのは、何故夢の殆どを忘れるのか。
それにこの部屋は…
確か、太宰の家だ。隣室を貸してくれている。
アイザックの異能だと、太宰と過ごすのが妥当だとも考えたのだろう。
「ダザイ…誰なんだ…、
…太宰!?」
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要注意異能力者___内務省異能特務課より
アイザック・バシェヴィス・シンガー:身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。
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χCielχ(プロフ) - かれぇらいすさん» ほわ〜!!ありがとうございます!!二次創作ではどれも画像に規制がかかっており、誤字修正の際に申請通してない画像は全部消えてしまって、アッ…となりました…ヒィ...とても申し訳ないです…!あいざくんはこれからも描くので、何卒…ッ!!!! (2020年3月16日 0時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
かれぇらいす - 久し振りに読み返してます!ところで第三十一舞のアイザ君のすんばらしいイラストはもう見れない感じですか…?私の端末だと写らない(?)のですが…(´・ω・`) (2020年3月16日 0時) (レス) id: c029fe2fa8 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - やっさんさん» わ〜!ありがとうございます!文スト自体が流血沙汰なので回避しきれない案件です! (2019年9月27日 15時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - χCielχさん» 第一章を読み切りました。アイザックさんも、厄介な過去をお持ちですね汗。根は、レイくんににていますね。細かいところは違いますが... 。少し休憩してから、続編を読んで、いきます。余談、シエルさんの、文スト、どうしても、流血沙汰に(苦笑)。 (2019年9月26日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 那佳さん» ぎえええ!?もしそうならとても嬉しいです(*´-`*) (2018年12月10日 21時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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