第五十舞『罪罰の因果』 ページ50
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午後十七時。
アイザックの救出は成功した。
父親は、既に凍死して居た。
アイザックのみが息をして居た。
「与謝野さん、アイザックは」
敦が、医務室の寝台に横になっているアイザックを、心配そうに見詰めた。
当のアイザックは心配を他所に、寝息を立てて居た。
「目を覚まさないかも知れないねェ。不思議と、身体が冷たい
ままなンだよ」
与謝野は医師として、そう告げた。
「…呑気な顔だな」
国木田が腕を組み、アイザックの寝顔を見た。
「そうだ!顔に落書きしたら目覚めるんじゃない?」
いつもの通りに振る舞う乱歩に、空気が明るくなった。
「それは起きた時に怖いンで、一寸…!」
谷崎は、落書きをしようとする乱歩に割って入って微笑む。
「…湯豆腐を、顔に掛けたら起きる」
「牛に乗っかって貰ったら如何ですか?」
続けて鏡花と賢治も、思い付くだけ目覚める方法を挙げた。
「…此処に大勢居るのは良くない。仕事に戻るぞ!」
国木田は事後処理へと戻る際、皆を押し出す。
残ったのは与謝野と太宰。
「アンタは善いのかい?」
「私は怪我人ですから」
怪我人と云う理由で、この場に残った。
「与謝野さんはやる事があるんでしょう?彼の事は私が見ますよ」
太宰が云うと、与謝野は微笑した。
「素直じゃ無いねェ、アンタも。なら任せたよ」
そう云うと、与謝野も医務室を後にした。
太宰の容態は良好で、もう普通に歩ける様にはなった。
太宰は、アイザックが寝ている寝台に座り、彼を見た。
「…有難う。頑張ったね」
小声で、呟く。
誰も聞いていない事を良い事に。
「おやすみ。何時でも…目を覚ますと良いさ」
太宰は少し微笑み、包帯だらけの手が、青年の金が、髪を撫でた。
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暗い部屋。明りは端末から放たれる光のみ。
「____矢張り、アレでは不浄に敵いませんか」
男は、親指を噛んだ。
「ぼくも是非、彼にお伺いしたいですね」
其の男、フョードル・ドストエフスキー。
能力名『罪と罰』。
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要注意異能力者___内務省異能特務課より
アイザック・バシェヴィス・シンガー:身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。
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χCielχ(プロフ) - かれぇらいすさん» ほわ〜!!ありがとうございます!!二次創作ではどれも画像に規制がかかっており、誤字修正の際に申請通してない画像は全部消えてしまって、アッ…となりました…ヒィ...とても申し訳ないです…!あいざくんはこれからも描くので、何卒…ッ!!!! (2020年3月16日 0時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
かれぇらいす - 久し振りに読み返してます!ところで第三十一舞のアイザ君のすんばらしいイラストはもう見れない感じですか…?私の端末だと写らない(?)のですが…(´・ω・`) (2020年3月16日 0時) (レス) id: c029fe2fa8 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - やっさんさん» わ〜!ありがとうございます!文スト自体が流血沙汰なので回避しきれない案件です! (2019年9月27日 15時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - χCielχさん» 第一章を読み切りました。アイザックさんも、厄介な過去をお持ちですね汗。根は、レイくんににていますね。細かいところは違いますが... 。少し休憩してから、続編を読んで、いきます。余談、シエルさんの、文スト、どうしても、流血沙汰に(苦笑)。 (2019年9月26日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 那佳さん» ぎえええ!?もしそうならとても嬉しいです(*´-`*) (2018年12月10日 21時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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