第三十八舞『冀望せし凱旋』 ページ38
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窓から、陽の光が入った。
太宰の見張りで、一睡もして居ないアイザックは、その光が不愉快だった。
「…今からでも遅くない。逃げたら良い」
太宰は静かに笑った。
「それじゃあ意味が無いんだよ」
「意味?」
今から死ぬと云うのに、何を気にして居るんだ。
アイザックは思った。
すると、部屋の扉が開いた。
空いた扉から、洒落た格好の男が入って来た。
「やぁ、シンガーさん。まだ熱心に変な薬作ってたりするの?」
太宰の口元は笑顔だが、瞳から光が消えて居る。
「失礼ですね。アレは完成しましたよ」
と、男は太宰に拳銃を向けた。
「…おい、何をそんなに慌てて殺す必要がある」
アイザックは、何時もより遥かに不機嫌そうだった。
「何故ですか?何か不満でも?」
「不満だらけだこの泥沼野郎、此奴を殺す意図を俺に教えろ!」
アイザックが男の胸倉に掴み掛かる。
「…だから不躾だと云って居るでしょう」
男の言葉に、アイザックは膝を着かされた。
不浄の鎖が身体に巻き付き、身動きが取れなくなる。
途端に、アイザックは大人しくなる。
「判れば良いのです」
アイザックは鎖から解放され、息を切らした。
「此方としては、早めに貴方を殺したいのです。太宰幹部?」
「…元、だよ」
アイザックは、目の前の男に完全に支配されている。
男は、再度太宰に拳銃を向けた。
「これは、私の遺言だと思って少し聞いてくれないかい」
太宰がそう云うと、男は拳銃を少し下ろした。
「良いでしょう」
太宰は続ける。
「アイザ君。先刻の、私の話の続きをしよう」
アイザックは黙って太宰に視線を向けた。
「私が後悔したのは…、君は覚えて居ないだろう。君は少し生意気で、不機嫌そうだったけれど…何時も私の横で笑って居た」
太宰の話は、犬から彼…彼から君へと、変わった。
「私は友人を失った後、君を手放した。その時に気が付いた。
今更だけれど、君は」
「話は終わりです」
男は、太宰に銃口を構えた。
「君が、私の…友人だからさ」
アイザックの瞳が揺らいだ。
気付けば、アイザックは短刀を高く振り上げ、主である筈の…
男の利き手を深く、切り裂いて居た。
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要注意異能力者___内務省異能特務課より
アイザック・バシェヴィス・シンガー:身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。
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χCielχ(プロフ) - かれぇらいすさん» ほわ〜!!ありがとうございます!!二次創作ではどれも画像に規制がかかっており、誤字修正の際に申請通してない画像は全部消えてしまって、アッ…となりました…ヒィ...とても申し訳ないです…!あいざくんはこれからも描くので、何卒…ッ!!!! (2020年3月16日 0時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
かれぇらいす - 久し振りに読み返してます!ところで第三十一舞のアイザ君のすんばらしいイラストはもう見れない感じですか…?私の端末だと写らない(?)のですが…(´・ω・`) (2020年3月16日 0時) (レス) id: c029fe2fa8 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - やっさんさん» わ〜!ありがとうございます!文スト自体が流血沙汰なので回避しきれない案件です! (2019年9月27日 15時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - χCielχさん» 第一章を読み切りました。アイザックさんも、厄介な過去をお持ちですね汗。根は、レイくんににていますね。細かいところは違いますが... 。少し休憩してから、続編を読んで、いきます。余談、シエルさんの、文スト、どうしても、流血沙汰に(苦笑)。 (2019年9月26日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 那佳さん» ぎえええ!?もしそうならとても嬉しいです(*´-`*) (2018年12月10日 21時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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