第三十五舞『怜悧なる博奕』 ページ35
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「…人遣いが荒いんだよ」
アイザックが不機嫌そうに腕を組んで、壁に寄りかかって居た。
「随分早い帰りですね。人虎は始末したのですか?」
椅子に腰掛けて居た金髪の男が、アイザックに云った。
「…殺したよ、短刀で首を一撃」
アイザックは、人差し指で首を切る様な仕草をした。
乱暴にソファに腰掛け、溜め息を吐いた。
「嘘が下手ですね。貴方は人虎を生かした。ある種の情で、殺さなかったのでは___」
男の言葉を遮る様に、アイザックは目の前の机を蹴り飛ばした。
「うっさい。面倒なんだよ、そう云うの」
アイザックは、男を睨み付けた。
「…不躾ですね」
「っは、そりゃどうも」
アイザックは、片手をひらひらと上げた。
「貴方に頼みたい事が有ります」
「…何?」
男は、明日始末する予定の捕虜の世話だと云う。
思わず、アイザックは顔を顰めた。
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「はぁ…やってる事、まるでマフィアだな」
独り言を呟くと、空間に声が響く。
意外にも、その声に返って来る物があった。
「そうかい?マフィアより随分優しい方さ」
両手を拘束され、身動きを取れなくされていたこの男。
黒髪の蓬髪…太宰だ。
「あんた、腹は空いたか?具合は?」
アイザックは、見ず知らずの男を気に掛け無ければならない役を押し付けられ、心底滅入っていた。
「空かないけど、蟹缶は食べたい。高いやつ」
「嫌だね」
アイザックは、太宰が拘束されている部屋に椅子を置き、そこに腰掛けた。
そして、黙って短刀を磨き始めた。
「おや、君が一日私と共に過ごしてくれるの?」
「きっっしょい云い方すんなよ!」
ぞわぞわと鳥肌が立った感じがし、若干寒気がした。
太宰の事を忘れたとしても、反応はアイザック本人のままなのだ。
「アイザ君」
太宰の呼んだ愛称に、アイザックは云い返す。
「アイザ?」
「君の名前だよ。長いだろう?どうせ死ぬから好きに呼んで良いでしょ?」
アイザックは、太宰から顔を背けた。
「…それで気が済むなら良いよ。勝手に呼んで」
此処からは賭けだ。
太宰は、この為に捕まったのだ。
「アイザ君。暇潰しに、私と少しお話でもしようよ」
太宰は、にこにこ笑って云った。
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要注意異能力者___内務省異能特務課より
アイザック・バシェヴィス・シンガー:身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。
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χCielχ(プロフ) - かれぇらいすさん» ほわ〜!!ありがとうございます!!二次創作ではどれも画像に規制がかかっており、誤字修正の際に申請通してない画像は全部消えてしまって、アッ…となりました…ヒィ...とても申し訳ないです…!あいざくんはこれからも描くので、何卒…ッ!!!! (2020年3月16日 0時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
かれぇらいす - 久し振りに読み返してます!ところで第三十一舞のアイザ君のすんばらしいイラストはもう見れない感じですか…?私の端末だと写らない(?)のですが…(´・ω・`) (2020年3月16日 0時) (レス) id: c029fe2fa8 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - やっさんさん» わ〜!ありがとうございます!文スト自体が流血沙汰なので回避しきれない案件です! (2019年9月27日 15時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - χCielχさん» 第一章を読み切りました。アイザックさんも、厄介な過去をお持ちですね汗。根は、レイくんににていますね。細かいところは違いますが... 。少し休憩してから、続編を読んで、いきます。余談、シエルさんの、文スト、どうしても、流血沙汰に(苦笑)。 (2019年9月26日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 那佳さん» ぎえええ!?もしそうならとても嬉しいです(*´-`*) (2018年12月10日 21時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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