第三十四舞『虚構せよ残夢』 ページ34
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敦がアイザックの苦しそうな表情を気に掛けて居ると、
アイザックは全てを呑み込む様に、強気の表情に変わる。
アイザックの素早い拳が、敦の顔面に来る。
敦は、それを片手で包み込み、ぱしんと受け止めた。
「…アイザックが、殆ど蹴り技しか使わないのは、」
敦が優しい声で云い放った。
「手、震えてるのが…気付かれるから?」
敦は、その望みに全てを掛けた。
アイザックの拳に威力は無く、蹴り程の速さも無かった。
本当は自分が何者か判らず、もし戦っている相手が、大切な人だったとしたら。
「……違う」
アイザックは後方に跳び、敦から距離を置いた。
横浜のゴロツキで、戦闘能力が高い。
しかしそれを除けば、周りと至って変わらない青年なのだ。
「アイザック。僕は…お前を倒してでも連れて帰る。何回忘れても、何度だって!」
敦は声を荒げ、アイザックに飛び掛かった。
虎の拳を構えた。
ぽつりと呟く声が聞こえた。
やけに切ない声だった。
「…ごめん」
敦の身体は、真紅の氷で覆われた。
手足、身体が真紅の氷で縫い付けられ、息だけが出来る状態になった。
「そこで…大人しくしててくれ」
アイザックは、敦を足止めにした。
下手に動いて足の傷口が開き、再出血していた。
アイザックは敦に背を向け、その場を去る。
「待って、アイザック!」
敦は叫ぶ。
アイザックは少しだけ顔をこちらに向けた。
何かを云っていた。声は聞こえない。
口の動きで読み取ろうにも、判らなかった。
その横顔が酷く儚く、もう二度と会えないのかと云う事さえ錯覚した。
後ろ姿は、威風堂々とした彼の姿。
正面から見た彼は、口元に手を当て、今にも泣いて叫び出しそうな声を抑えていたのだ。
そんな情けない顔、誰も見て居ない。
____食べ物を口一杯に頬張る阿呆そうな顔。
緊張して居たのか、変な自己紹介をされた。
これは、俺の記憶?
掻き消す様に、アイザックは走った。
大事な事を、忘れている。
「おい、不浄。命令違反だ。探偵社のヤツは殺せって云ってんだろ」
走るアイザックを止め、ゴロツキの一人がアイザックに云った。
アイザックは、容赦無い蹴りを男の顔面に喰らわせた。
「黙れよ、俺に…指図すんな」
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要注意異能力者___内務省異能特務課より
アイザック・バシェヴィス・シンガー:身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。
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χCielχ(プロフ) - かれぇらいすさん» ほわ〜!!ありがとうございます!!二次創作ではどれも画像に規制がかかっており、誤字修正の際に申請通してない画像は全部消えてしまって、アッ…となりました…ヒィ...とても申し訳ないです…!あいざくんはこれからも描くので、何卒…ッ!!!! (2020年3月16日 0時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
かれぇらいす - 久し振りに読み返してます!ところで第三十一舞のアイザ君のすんばらしいイラストはもう見れない感じですか…?私の端末だと写らない(?)のですが…(´・ω・`) (2020年3月16日 0時) (レス) id: c029fe2fa8 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - やっさんさん» わ〜!ありがとうございます!文スト自体が流血沙汰なので回避しきれない案件です! (2019年9月27日 15時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - χCielχさん» 第一章を読み切りました。アイザックさんも、厄介な過去をお持ちですね汗。根は、レイくんににていますね。細かいところは違いますが... 。少し休憩してから、続編を読んで、いきます。余談、シエルさんの、文スト、どうしても、流血沙汰に(苦笑)。 (2019年9月26日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 那佳さん» ぎえええ!?もしそうならとても嬉しいです(*´-`*) (2018年12月10日 21時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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