死ぬより先に、どうか殺して呉れ。【文豪ストレイドッグス】

第十八舞『解する真実』 ページ18

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＿＿＿＿支配せよ、不浄。





汝の血は穢れ。欲を纏い、平伏せ。













ポートマフィア拠点、執務室。







「首領、やっと芥川が風呂に入りました」






草臥(くたび)れた中原が、鷗外にそう告げた。






「軽度の凍傷で済んで良かったよ。アイザック君も、殺す気で
凍結させた訳では無さそうだね」






鷗外が机に頬杖を着いた。




中原が鷗外に近づき、一つの小袋を鷗外の机にそっと出した。







「ふむ、中也君。これは？」





「…薬(ヤク)に詳しい部下が調べた所、見た事のない物です。恐らく、麻薬とは違う…別の何かかと」





眉を顰め、中原は云う。



小袋の中には、灰色の粉が入って居る。






「…成程ねぇ。そう云えば、もう用済みの捕虜が居ただろう。
それで少し試すと良い」






鷗外の瞳に、光は無かった。




これが、ポートマフィアの在るべき姿なのだ。







「それと…アイザック君が、太宰君の手に渡ったのだろう？」






「はい、確かな情報です」






中原が灰色の薬を手に取り、丁寧に懐に入れた。






「こりゃ、やられたね。彼の記憶が欠けて居るのが唯一の救いだ」






戦闘能力が高いだけでは、マフィアの脅威に達しない。






「中也君、アイザック君が太宰君に忠実だった理由が判るかい？」






中原は、首を横に振る。






「彼は別に、太宰君に忠誠を誓って居た訳では無いのだよ。
寧ろ、その逆だっただろうに」






鷗外は、本当に気の毒だよ。と溜め息を吐いた。







「…と、云うと？」







鷗外は静かにこう云う。






「アイザック君の異能だ。



一見彼の異能は、自身から出血した血の量に応じて、周りを
真紅の氷で凍結させる事が出来る。


しかし本来は、自身の体内に取り込んだ他人の血が鎖となり、
自身の主となる。主の声ひとつで、獣を解き放つ事も、
檻に入れる事も出来る」







中原の目が揺らいだ。ならば太宰は、真逆…








「正直ね、驚いたよ。太宰君が…自分の血液を彼の体内に注射したと訊いた時には」






アイザックの損傷した部分が、赤く凍結するのは…無闇な他人の血液の侵入を防ぐ為でもある。




その事を、アイザック本人の記憶には無い。







「それに主従の関係は、太宰君がただ触れただけでは解けない。彼の体内の何処にあるか判らない『鎖』に触れる必要がある様でね」






それが鷗外の知る、アイザックの異能だ。






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要注意異能力者＿＿＿内務省異能特務課より

アイザック・バシェヴィス・シンガー：身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。

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