死ぬより先に、どうか殺して呉れ。【文豪ストレイドッグス】

第四十一舞『仄暗い狼煙』 ページ41

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「なぁ、国木田遅っせぇよ！もっと飛ばせ！」






先程 見事に狙撃手に命中した事で、アイザックは上機嫌だった。






「髪を引っ張るなアイザック！気が散る！それにだな、速度制限
と云う物があるのだ！」






国木田が何時の間にか、小僧と呼ばなくなった。




アイザックはそれに気付きながらも、照れ臭いので知らない振りをした。






「じゃあ太宰が運転しろよ。速度もクソも無くなる」






アイザックが云うと、国木田は真面目な顔でこう云う。






「辞めておけ。この軟弱男に運転はさせるな」






「酷くない？私だって安全運転くらい何のその。それにね、私よりアイザ君の方が失神レベルだよ」






窓を開けてたら外に弾き飛ばされるよ、と助手席の太宰が云った。






「案外、絶叫アトラクションみたいで楽しいかもだろ。俺に運転させろ！」







「絶対厭だ！！」





と、谷崎と敦が二人掛かりでアイザックを押さえ付けた。








「冗談、冗談だって！本気にしすぎだろ！」







「全然冗談に聞こえないンだけど…！」




「国木田さん！アイザックは僕達が押さえます！」






押さえ付けられたアイザックは、可笑しくて涙が出そうな程笑った。






太宰は、ルームミラー越しに見えるアイザックの笑顔を見て、連られ微笑んだ。







「ならば私に運転させ給え！」






太宰が明るく云った。






「させるか！」






国木田が前を向いて運転をしながら、長い足で太宰を押さえ付けて居た。








ふと、国木田が急停止した。








「うわわ、う…い、今のやるじゃないか…少し内臓に響いたよ…」






太宰が国木田の顔を見ると、





国木田は目の前の一点を見詰め、冷や汗を流していた。






国木田が見て居る方に太宰が目をやると、太宰も息を呑んだ。






やっと正気を取り戻した国木田が、突然慌ただしくレバーを引く。





国木田にしては荒々しく、後方にバックした。





運の良い事に早朝。この道路を走る車はこの車以外には無かった。







「国木田君！後少し下がるんだ！」






「判って居る！」







前の席の二人の様子しか判らない後部席の四人は、余りにも張り詰めた空気に言葉を失う。







「窓を閉めて！」







太宰の声にハッとし、窓を閉める。






瞬間、目の前で爆発が起こった。






灰色の煙が、空高く上がった。







太宰は、灰色の煙が何なのかを知って居た。








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要注意異能力者＿＿＿内務省異能特務課より

アイザック・バシェヴィス・シンガー：身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。

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