Necromance９６ ページ46
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小さな病室に。
今日は太宰では無く、珍しい人間が訪れて居た。その人物は何処に腰掛ける訳でもなく、立ったまま藤崎の寝顔を見下ろして居た。寝顔と云うよりは…最早、死に顔にも等しいが。
今、藤崎の見舞いに来たのでは無い。かれこれ数十分はこの状態で、言葉を発さずに居たその人。
漸く口を開けば、それは「ふ、」と云う静かな笑い声。
「君らしいですね。翔君」
落ち着いた声色。黒髪に、紫色の瞳。思わぬ客人だ。真逆、
死の家の鼠の頭目が…藤崎の元に来るとは。
「生きる訳でも無く、死ぬ訳でも無く。成程、君が縛る霊体は、暫くは未だ君の中で過ごせると云う訳ですか」
ドストエフスキーは手の甲を藤崎の頬に当て、藤崎の体温がきちんと温かい事を確認した。そうしてすぐ目を伏せ、薄く口角を上げる。
「ぼくなら…今すぐ君を、生の呪縛から解放する事も出来ます」
頬から長い桜色の前髪に触れ、髪を退かす。そこから普段見えない藤崎の右目が露わになる。藤崎の両の目を見たのは初めてだ。そう思いながら。
「それをしないのは…、君と約束をしたからです」
少し間を置いて、紫色に染まる瞳を細める。
「…新幹線の回転寿司、まだ連れて行ってもらって居ないので」
それは藤崎が、ドストエフスキーに今度行こうよ。と誘った場所である。然しそれも果たせずに眠り込む本人。
少し不思議に思った事がある。ドストエフスキーは顎を摘む仕草をして少し考えた。
毎週月曜。決まった時間にドストエフスキーと藤崎は、云わずともあの喫茶処で待ち合わせをする。何時も情報を共有する訳でも無く、寧ろ下らない事を話して終わる事の方が多かった。
二人が集まる事に、大した意味は無く。
それなのに。
藤崎ならまだしも、ドストエフスキーが飽きずに態々毎週出向くのだ。
「………あぁ」
何か確信を得た様に、ドストエフスキーは再度藤崎の表情に目を移す。
「…ぼく、案外君の事…嫌いじゃ無かったみたいですね」
彼の口から出た珍しいその言葉も、藤崎の耳に届く事は無い。
ドストエフスキーは目の前の揺れる白いカーテンを見詰める。
「精神世界は、異能の一種に過ぎません。然し異能無効化は、深く堕ちた精神には届かない。…ぼくは、『異能の存在しない世界』を創り上げます。そうすれば、君は」
そこまで云い、口を噤む。そうしてまた薄笑いを浮かべた。
「翔君。君がそうまでして救った『穢』は、ぼくが見極めます」
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何処かの誰かのノート
彼奴を必ず救う。絶対に。
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ekakisitemasu(プロフ) - 1番最後の何処かの誰かのノートの彼奴を必ず救う。絶対に。で大号泣しました、、、、 (2022年10月21日 23時) (
レス) @page50 id: 583e2155f1 (このIDを非表示/違反報告)
愛(プロフ) - 天才 (2022年4月29日 13時) (レス) @page50 id: 1cfd8c976c (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - ファイさん» ありがとうございます…！笑って泣けるような作品にしたくて書いておりました！こちらこそ埋もれていたであろうこの作品を見つけてくれてありがとうございます、とても嬉しいかぎりです…！！！本当にありがとうございました！ (2021年11月27日 0時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
ファイ - ｱｯ……ﾔﾊﾞｲ エッ俺の心臓無事？大丈夫?あ、好き 主様本当にこんな素晴らしい作品を書いてくださり有難う御座います大好きです応援してます大好きです｡ 最初見たとき大号泣してしまいました｡ 本当にこんな素晴らしい作品を書いてくださり有難う御座います神! (2021年11月16日 18時) (レス) @page50 id: 1f415ed449 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 白鳥さん» あわわ、ありがとうございます.......！是非に！！！！私も白鳥さんのような方に出会えて嬉しさの極みでございます…ありがとうございます.......！！！ (2021年4月30日 17時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
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