Necromance78 ページ28
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「…太宰の野郎、本当にそんだけ聞いて帰るとはな」
先程藤崎が「彼の為に必要なんだ」と云い、太宰は目を細め、
「そうかい」と返して店を出て行った。
「ちゅうやくん、アイザック君のことよろしくね、前もいったけど」
「まぁ…そりゃ善いが、手前が面倒見りゃ善いじゃねえか」
「やだなぁ〜、俺はサクリファイスまでだよ」
伏せていた頭をむくりと起き上げる。顔は赤いが、彼に似つかわしくない真剣な表情だ。中原の耳に聞き慣れない単語が入って来た為、眉を顰めて疑問符を浮かべた。
「はぁ?サク…?」
「…灰色の粉末、見覚えがない?」
灰色の粉末。中原には見覚えがあった。任務で芥川が密輸業者を排除した所、見た事の無い薬がその場にあった為に持ち帰り調べたものである。
灰色の粉末を用済みの捕虜に接種させた所、激痛に悶え血を吐いて、一瞬にして絶命した。
その灰色の薬の事を、『サクリファイス』と云う。
「あァ…あの訳の判んねェ即死薬か」
「ありゃ…お気の毒に。君達マフィアが持ってたのは即死する
『試作品』の方だね…完成品のサクリファイスじゃない。完成品の方は、痛みに長時間悶えて悶えて大量に摂取をすれば死ぬ様に作られてる。謂わば試作品の下位互換が完成品だ」
真剣そうに見えて、かなり酔っていると判る。藤崎がこんなにも情報をべらべらと無益に喋る筈が無い。
藤崎に情報を漏らされては困る。それは中原が幹部であるから善く判る。中原は藤崎の後頭部を掴んで机に顔を押し付けた。
「へぶっ」
「べらべら喋んな酔っ払い。黙ってろ」
片手で藤崎の頭を押さえ付けたまま、空いている手で酒を一口飲む。「ギブアップ」とでも云う様に、カウンター机をバンバンと叩く桜髪の男。
ぱっ、と桜頭から手を離す中原。押さえ付けられ鼻を痛めた藤崎は、涙目になりながら自身の鼻を摩った。
「痛いなあもう丁寧に扱ってよ…」
「善いじゃねェか、目が覚めただろ」
「ううん〜?まったく」
へらへらとする藤崎に腹を立てつつ、店内なので怒鳴るのを堪え溜め息を吐く。カランと氷の音を立てて酒をもう一口。元々ほろ酔いだった中原も段々と本格的に酔い始めて来た。
「っあ〜〜、おい、俺にも濃いの頼む」
とカウンターで杯を磨くマスターに投げ掛ける。
「あっはっはっは!酔う気だね!よしよし絶対負けないんだからね!俺にももう一杯〜!」
ここから中原と藤崎の飲み対決が始まった。
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何処かの誰かのノート
彼奴を必ず救う。絶対に。
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ekakisitemasu(プロフ) - 1番最後の何処かの誰かのノートの彼奴を必ず救う。絶対に。で大号泣しました、、、、 (2022年10月21日 23時) (レス) @page50 id: 583e2155f1 (このIDを非表示/違反報告)
愛(プロフ) - 天才 (2022年4月29日 13時) (レス) @page50 id: 1cfd8c976c (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - ファイさん» ありがとうございます…!笑って泣けるような作品にしたくて書いておりました!こちらこそ埋もれていたであろうこの作品を見つけてくれてありがとうございます、とても嬉しいかぎりです…!!!本当にありがとうございました! (2021年11月27日 0時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
ファイ - アッ……ヤバイ エッ俺の心臓無事?大丈夫?あ、好き 主様本当にこんな素晴らしい作品を書いてくださり有難う御座います大好きです応援してます大好きです。 最初見たとき大号泣してしまいました。 本当にこんな素晴らしい作品を書いてくださり有難う御座います神! (2021年11月16日 18時) (レス) @page50 id: 1f415ed449 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 白鳥さん» あわわ、ありがとうございます.......!是非に!!!!私も白鳥さんのような方に出会えて嬉しさの極みでございます…ありがとうございます.......!!! (2021年4月30日 17時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
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