傷だらけの君を、描かせて呉れ。【文豪ストレイドッグス】−不浄編−

Necromance６１ 穢れた追憶：壱 ページ11

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アイザックの異能は、『真紅の氷』を操る。


多くの人はそう思う。実際、公になって居る詳細はそれだけだからだ。


ならば教えよう。一旦、『真紅の氷』は忘れて。




アイザックの本当の異能は、他人の血液を自身の体内に接種する事で、その『他人』に隷属する異能だ。


判り易く云うなら…四年前、太宰君は注射器で自身の血を抜き取り、鮮血の入った注射器をアイザック君に刺した。そうすると、アイザック君は太宰君の云いなりになる。


太宰君…主人の云う事は絶対。主人が命令した事には逆らえない。「殺せ」と命令されれば殺さずには居られ無い。相手がどれだけ大きくても、身体能力を何倍にも増幅させて、必ず遂行しようとする。



…と、ここまでが、彼が元から持って居た異能力だ。


何年前か。アイザックの父親が、自身の血液をアイザックに飲ませたんだ。絶対忠実。隷属する異能。本当の、初めの命令は…「母親を殺せ。」



アイザックは幼いながらに、自分の異能に勝てず…母親を殺した。優しい母親だった。



だから、だから俺は彼に植え付けた。異能実験で彼に植え付けた『真紅の氷』の異能は、後付けでしか無い。始めは、異能技師の様に上手くは行かなかった。


何度も痛い思いをさせて、何度も喚かせて、何度も殺しかけた。今でも覚えている。彼は顔がぐちゃぐちゃになる位…泣いていたな。


君も、他の人間に無造作に利用される位なら、此方の方がマシだろう。ねえ。そうだろ。そう…勝手に俺が思って仕舞った。


一日では終わらず…目覚める度、彼は俺に怯えて居た。



それで思い付いた。俺の事も、利用された記憶も、全て消えてしまえば善いのでは無いかと。



『真紅の氷』は、文字通り真紅の氷を操る。傷口が直ぐに氷で硬化し、他人の血液を取り込む事を防ぐことも出来る。殺傷能力も高い異能。君を守る盾になってくれる。そして、他人の血を打たれる度に記憶を失う仕組みだ。


新たな主人に仕えるには、それ以前より前の記憶は要らないから？違う。彼に穢れた記憶を、忘れて欲しかった。


それを植え付けた上で、俺は彼に、自分の血液が入った注射器を打ち込んだ。『真紅の氷』を持つ彼の、最初の主人になった。


『真紅の氷』。矢張りこれは規格外で、代償が必要だった。それが自傷。自傷を程々にすべく、俺は君に短刀の使い方を教えた。



一寸やんちゃしてた頃の短刀術を、教えただけだけどね。



え？やんちゃは今も？やめてよ…。


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何処かの誰かのノート

彼奴を必ず救う。絶対に。

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