傷だらけの君を、描かせて呉れ。【文豪ストレイドッグス】

Necromance４４ ページ44

_


吹き飛ばされ、身体を打ち付けて転がった藤崎の身体を、重圧が押さえ付ける。骨が軋む音がし、逃げる事も出来ない。


霞んだ目で、ゆっくり近付いて来る中原を見上げる事しか出来ない。にも関わらず、薄気味悪い笑みを浮かべる。



「おい、『仕方無かった』なんて云わせねェぞ」



藤崎が口にした事に対し、中原は激怒した。中原にとって
アイザックがどんな存在か。簡単に云えば弟の様なものだ。

そんな目線でアイザックを見て来たからか、藤崎が話した内容が…中原の逆鱗に触れたのだ。


かなり怒らせて仕舞った様だ。下手したら殺される勢いだ。死は素晴らしい事だ。人々は霊体になれる。


けれど自身が死ぬのは好ましくない。縛れないし、何より今縛って居る霊体達の居場所が無くなって仕舞う。



相手は『神』。ちっぽけな抵抗だとは判るが。



周りの廃墟の窓硝子が割れ、瓦礫がふわりと浮かび上がる。この辺り一体が揺れる。


これは中原によるものではない。



凶暴な霊達による、ポルターガイストだ。


硝子や瓦礫が、一斉に中原に襲い掛かる。だが中原は、そんなもの気にも留めない。全ての物体が中原に触れた時点で動きを止める。


蚊でも振り払う様に瓦礫を払い、瓦礫は路地の隅に散った。再び藤崎の方に視線を戻すと、そこに藤崎の姿は無かった。硝子や瓦礫は目眩しの代わりか。


背後に気配を感じて振り返れば、至近距離に藤崎の姿。左手に持つのは、小型の短刀。切れ味の善さそうな刃がきらりと輝く。


素早く振り上げられた短刀。中原は後方に避け、それを回避した。桜髪の男が踏み込んでもう一撃。今度は中原の首元を狙う。


中原も短刀を取り出し、器用に掌でくるりと短刀を回しては、首元に迫る刃を 短刀で受け止めた。



金属が交わる音が反響した。驚くべきは、目の前の藤崎が無表情だと云う事。



「ハハ！こりゃ傑作だぜ！手前を貧弱だと信じて攻撃仕掛けりゃこう成るって訳か。その短刀は何処から出て来やがった？」


「この短刀薄いからね。足首の辺りに巻き付けて忍ばせられる。ただの護身用だよ」



中原の口角が上がる。戦闘狂気質な中原にとって、前代未聞の相手。非常に頭の切れる短刀使い。



「手前の今の動きは…アイザックに似てるぜ。いや、アイザックが手前に似てンのか」



無表情だった藤崎は、にこりと笑う。



「正解」



過ちを償う為とは云わない。俺は彼に、異能以外で戦う術を教えたかった。彼の異能は、悲し過ぎるから。


_

Necromance４５→←Necromance４３

【要注意人物】

藤崎翔：年齢27歳。身長175cm。体重58kg。彼の詳細を公にすれば、街の均衡が乱れる可能性が大いにある為、詳細は厳重に保管、或いは消去済みである。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す