君の世界に、意味を与えよう。Act2【文豪ストレイドッグス】

salvage５６ luxury liner ページ6

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地下を出て、外を見渡せる甲板。空は黒く曇り、波が荒れて居た。何より可笑しいのが船の進行。東だった進行方向は逆走。



猛速度で、横浜の港に向かって居る。




「…はやい、なんでだ」



レイが甲板の柵から身を乗り出して、船の速度を確かめた後、太宰に振り返って云った。



「…これが狙いさ。元々この船には米国の異能組織の人間は居ない。提琴演奏者、伴奏者、賭博場のディーラー、それら全ては雇われた人間だ。でなければレイ君を見て、落ち着いて居られる訳が無い。

そして人身売買の密輸が暴かれた。この船ごと抹消、次いでに横浜も壊滅させられる。汚い連中だね」



あれだけレイが暴れれば、米国異能組織本部に連絡が来ない筈が無い。だが連絡が行き届いて善いのだ。何度も云うが、これは『牽制』だ。



甲板の広い場に出ると、船が荒波に揺られ偏った。身を崩した
太宰をそっと支えたレイ。




「へいきか」


「君、相当な体躯してるねえ」




にこりと笑った後、太宰はゆっくりと前に歩んだ。




「ねぇレイ君。私思うのだけど…この豪華客船の上で死ねたら、素敵だと思わない？」




ある程度レイと距離が空いた所で、太宰はくるりとレイに振り返る。




「暴走した船は、米国から操作されている。舵は効かない。
面倒だ。そうだ諦めよう。この豪華客船で潰えて、意味の無い世界から解放される。一石二鳥じゃないか」




「だざ、」




レイは目を丸め、息を飲んだ。




カチャ、と云う音と共に、太宰は拳銃を自らのこめかみに当てたのだ。愉快そうに微笑みながら。





「じゃあ。君は死ねないからね。退屈な世界を生き給え」




引き金に掛かる指に力が入った。












＿＿＿＿突如、轟雷。





雷に打たれた船が大きく揺れ、太宰は蹌踉ける。拳銃から放たれた弾丸は、こめかみとは全く別の方向へ飛んだ。


太宰の頬に激痛。レイに拳で殴られ、ずざざ、と甲板の床を転がる。余りの激痛に起き上がれず、「ふは、」と薄く笑った。





レイが歩いて転がる太宰に近付き、太宰に跨る。太宰の胸倉を掴んで、叫んだ。






「ばか！！」





幾つも降り注ぐ轟雷と、雨。レイの感情を代弁する様に、急に降り出した。




「なんで死のうとした。なんで、なんでだ、」



「何でって、生きて居ても退屈だからだよ。何の意味も無い。それにどうせ死ぬさ。船は此方では(・・・・)止められない」



降り注ぐ豪雨が、太宰とレイを濡らして居た。


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ポートマフィア『隷属部隊』隷属者No.01

レイ・ブラッドベリ：音楽界の名家『ブラッドベリ』出身。血が足りて居れば下手に暴れる事は無い為、適度な血の供給を推奨する。＿＿＿＿隷属者No.01『所有者』＿＿＿＿太宰治。

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