君の世界に、意味を与えよう。Act2【文豪ストレイドッグス】

salvage５５ luxury liner ページ5

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「早く飲んで」



「いやだ」



太宰は腕の包帯を解き、レイの口の前にずいずいと腕を掲げた。一方のレイは両手を前に出して、拒否の姿勢。



「い、い、か、ら」



「いらない」



そうだ。敬語だ。ハッ、としたレイは直ぐ様云い直す。






「イリマセン」



「敬語で云っても無駄。後ぎこちないし何なの」



太宰が片手でレイの頬を潰し、露わになった腕を押し付ける。レイは両手で太宰を引き剥がそうとする。ぐぐぐ…、と、吸え吸わないの攻防。




「君、血好きじゃない。飲みたくない理由は何なのさ。私の血が美味しく無いとか？悪いけど蛞蝓味の中也よりは美味しい筈だから」



太宰の顔は引き攣りつつも薄笑いである。器用な青年だ。対するレイは真顔。表情筋が死んで居る。




「じゃあそういう事にする。だからのみたくない」



「じゃあって何だい。そもそもねえ、美味い不味いの問題じゃないのだよ」




太宰は深く溜め息を吐く。ぱっ、とレイを離し、周りを見渡す。牢から解放された人間が此方を見て居る。確かに注目を浴びながら吸血するのは嫌か。


すると一人の少年が、レイと太宰の元へ駆け寄った。その少年は、長い事この身分で居たであろう乏しい格好をして居た。




「あの……有難う御座います」



太宰とレイに向かって礼をした少年。礼を云われる立場では無い。この場から解放しても…行く先までは決めてやれない。今よりも辛い環境になるかも知れない。




＿＿＿＿あの時助けた亜麻色の髪の少年は、今頃この様な身分で居ても可笑しくは無い。




亜麻色の髪の少年…。それは、『隼』と呼ばれる狙撃手の少年の事だ。レイの存在が、優しさが、少年を生かして居る。最も、善い生活をして居るとは限らないけれど。



レイは少年の頭に手を置いて、優しく撫でた。自由を与えてやる事は出来ても、この先の幸せまで与えられる力は無い。己の無力さを、レイは悔んだ。



掛けてやる言葉が見付からず、ただそっと撫でた。




ふと太宰を見ると…少年を撫でるレイの手と、少年の頭を見ていた。そんな太宰を、レイはじっと見詰める。




「何」



レイに凝視された太宰は、何故か一寸だけ不機嫌そうにそう返した。





「…もっとちかくにこい、なでなでしてやる」



「撫でてやる」では無く「なでなでしてやる」。子供扱いされた様で癪に障る。





「要らないから」




「はんこうきか」




「…待って。何処でそんなの覚えたの」


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ポートマフィア『隷属部隊』隷属者No.01

レイ・ブラッドベリ：音楽界の名家『ブラッドベリ』出身。血が足りて居れば下手に暴れる事は無い為、適度な血の供給を推奨する。＿＿＿＿隷属者No.01『所有者』＿＿＿＿太宰治。

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