君の世界に、意味を与えよう。Act2【文豪ストレイドッグス】

salvage８２ ページ32

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異能無効空間の中でレイは霧になる。そんなレイの姿を、中原だけが呆然と見ていた。



「おい太宰、如何云う事だ。レイの奴異能使ってんぞ」



「中也未だ判ら無いの？脳まで筋肉だと本当不便だねえ」



「手前…後で覚えてろよ青鯖野郎」



太宰は「やだね、忘れてるよ」と手で中原をしっしと追い払う。その後、太宰の横顔が真剣になった。異能無効空間の中で自由に異能を使って銀髪の吸血鬼と戦うレイを真っ直ぐに見詰めて。



「レイ君の異能はね、『己の力を抑える異能』だ。鎖ひとつで抑え込める、そんな異能。無闇に人を傷付けたくないって云う…、
レイ君自身の莫迦みたいに優しい考えから生まれた異能さ」



ならば。『吸血鬼の異能』と云うのは？あの強さは…異能では無く本物の……『怪物』。



「まじ、かよ…」



中原の口角が引き攣る。太宰が歩き出す。懐から何かを取り出しながら。それは鮮血の入った試験管。そろそろレイも血が足りないだろうと踏んだ太宰は、携帯していた試験管を手に取ったのだ。




「レイくーん！行くよー！」



太宰が叫び、腕を振りかぶった。試験管は空を飛ぶ。飛んで落ちる。何処に落ちたかと云うと、かなり手前の崖に。


ひゅーんと虚しく崖下に落ちた試験管。太宰は投げ終わった体勢のまま固まって居た。いや真逆、これ程自分に投擲力が無いとは思わなかった。


太宰は撥条(ぜんまい)人形の様にぎこち無く中原に振り返る。その顔は微笑んで居たが、何処か焦燥の色も見える。


中原も「嘘だろ」と云う顔をしていたが、大きく息を吸ってこう云ってやる。




「んの貧弱野郎！！何してんだよ！！」



中原とて叫ぶので精一杯。目の前の崖も越えられない様な、絶望的な太宰の筋力。



レイの方を見ると、レイが押されて居る。相手は始祖では無いと云えど、レイの何倍も生きて居る吸血鬼。余りにも差があり過ぎる。




「…まあ、心配は要らない。レイ君は知って居る。吸血鬼が絶命する方法を」



「そりゃ手前が開き直っただけだろうが」



「本当さ。ただ、血が足りなくて困っては居るのだろうけれど」



激突する鋭い爪と爪。レイ素早く炸裂する蹴りを受け止めた銀髪の吸血鬼。後方に跳んで距離を確保するレイ。再度敵の死角に入り込んで、今度は金剛石をも砕く様な鉄拳。


真っ白な純白の髪が逆立ち、薔薇色の瞳孔が開く。相手が強者。レイの事だ。単に楽しくて仕方が無いと云う感情も、何処かにあるのではないだろうか。


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ポートマフィア『隷属部隊』隷属者No.01

レイ・ブラッドベリ：音楽界の名家『ブラッドベリ』出身。血が足りて居れば下手に暴れる事は無い為、適度な血の供給を推奨する。＿＿＿＿隷属者No.01『所有者』＿＿＿＿太宰治。

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