君の世界に、意味を与えよう。Act2【文豪ストレイドッグス】

salvage６７ ページ17

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向こうの牢の隷属部隊の皆が寝付いた頃。


レイは冷たい地面に座り、鉄格子に凭(もた)れ掛かって居た。空の無い天井を見上げ、鉄格子に後頭部を押し付ける。


空、綺麗だったな。海も綺麗だった。隷属部隊の皆にも見せてあげたいと思った。


如何にか、彼等を自由にする手は無いだろうか。レイは珍しく、小さな溜め息を吐いた。






「……悩み事かぇ？珍しいのう」



ふと、背後から凛とした女性の声が聞こえた。レイは気付いて居た。振り返らず、何でも無いと首を振る。



「やっぱり、こうようか」



声の正体は、尾崎紅葉。彼女とレイは、尾崎がまだ幼い頃からの…先代の頃からの知り合いだ。



「匂いか？毎度訊いておるが、一体どんな匂いじゃ」



レイはうーんと悩み、悩み込んだ末、こてんと首を傾げた。そしてハッと思い付いた顔をして、手をポンと叩く。



「つけものだ」



「漬物…じゃと」



確かに漬物は好む尾崎。然し自分が放つ香りが漬物だと知れば心が病む。



「うそだ」




無表情で嘘だと告げられ、安堵したのも束の間。今度は一寸した怒りが込み上げて来る尾崎。だが品のある顔は崩さない。


ぺしっ、とレイの頭を軽く叩く。




「いたい」



「何処で嘘など……、太宰か」



レイがやっと尾崎に振り返る。暗闇に光る薔薇色の瞳。何時見ても綺麗だ。レイは立ち上がって、尾崎と向かい合った。


昔と変わって伸びた尾崎の背丈。綺麗になった顔付き。レイにとっては、つい最近まで少女だった尾崎がこんなにも成長しており、沁々として居た。


尾崎が十四歳の頃。肝心な時に助けてやれず、鉄格子越しに傍に居てあげる事しか出来なかった。そんな罪悪感が、消える事無くレイの中で残って居る。



「こうよう、大きくなったな」



と、尾崎の綺麗な赤髪に手を伸ばす。だがそれはぱしんと払われて仕舞った。レイの目が点になり、頭に疑問符が浮かんだ。



「なんでだ、なでたい」



「止せ。子供じゃあるまい」



更に疑問符が浮かび上がる。レイからすれば、この世界の人間は全て子供に見えて仕舞う。ざっと二百年程生きて居れば、それも当たり前だろう。



「レイ」



尾崎が目の前の『少年』の名を呼ぶ。レイはずっと昔から、光しか見て居ない。どんなに暗い闇でも、それを光に変えて仕舞うレイの思考が、少し…羨ましくもあった。




「そなたは、変わらぬな」



「あぁ。俺は身長がまったくのびない」




そう云う事では無いのだが。

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ポートマフィア『隷属部隊』隷属者No.01

レイ・ブラッドベリ：音楽界の名家『ブラッドベリ』出身。血が足りて居れば下手に暴れる事は無い為、適度な血の供給を推奨する。＿＿＿＿隷属者No.01『所有者』＿＿＿＿太宰治。

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