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____未だ期待して居るのかい?云った筈だよ。
必ず君の翼を落とすと。
嫌だ、消えないで。治くん、
坂口くん、
織田くん。
「____ッ!あ、」
暗闇から視界が晴れた。一番に見えたのは、手を伸ばす自身の右手。右手首に巻かれた大事な赤い御守り。
首筋を伝う、冷や汗。漸く気付いた。目を開けてから、息をしていなかった。
「は…」
伸ばした右手の力を抜き、手の甲を額に当てる。額から流れ出て居た血もない。傷もない。きっと与謝野さんが治してくれたのだろう。
だが見た所、ここは医務室ではない。
ふわ、と香った香辛料の香り。
「うあっちぃ!」
向こうで、聞き慣れた人の叫び声が聞こえた。先程の変な夢を見て、何処と無く身体が怠くて重い。
布団を剥ぎ、のそのそと立ち上がる。頭を押さえ、壁を伝って声のした方へ向かう。
案の定、台所で太宰が何やら頑張って居た。
「あれ?変な色になっちゃった…私の知ってるカレーはこんな色じゃ…なんか水々しい!?」
一人で必死に鍋に向かっている。北森は空になったカレールーの箱を見ると…カレーでは無くハヤシライスだった。
北森は、空の箱をぱこんと太宰の頭に叩き当てた。
「あいたっ」
「何してるの」
北森は素の表情で、呆れた様に太宰を見ていた。カレーとハヤシライス。間違えても気付くだろう普通。…そんな所も嫌いでは無い。
「あ、目が覚めた?いや何ね、カレーを作って居るのだけど…色変だし…水々しいし…」
「これね、治くん。カレーじゃないよ。ハヤシライス」
太宰の目の前に、ハヤシライスと書かれた箱を見せ付ける。
「そんな…!?」
太宰が頭を抱え、絶望した様に云った。ハヤシライスも充分美味しい。北森は励ます為、太宰の肩に手を置いた。
「こうなったら、絶品ハヤシライスを作るよ。手伝うから。
料理はチームワークだよ」
何時の日か聞いた事のある台詞。太宰は目を細めて微笑む。
「…ふふ。また袋から取り出す係は嫌だからね?」
「真逆。治くんも成長したみたいだし。って、何この玉ねぎ…
まーーだ切って無いの!?」
「だって目が痛いから…!」
青年は亜麻色の髪を耳に掛け、腕を捲る。手を洗い早速包丁を持つと、切った玉ねぎの一部を太宰に差し出す。
「これ咥えて」
「え、何で?」
「玉ねぎ咥えながら切れば、目に染みないんだよ」
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【要】注意異能力者
北森鴻:十九歳。身長167cm、体重52kg。性格、異能力共に危険性があると判明。条件が揃えば、接触せずとも相手を手に掛ける事が可能な異能を持つ。
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抹茶ラテ - ふと見つけて読んでみたら凄く面白くてなかなか長文物を読まない私でも気づいたら完結の所まで!!会話文や文構成が上手で途中感動でついうるッと来てしまう場面もありました、、!このような素晴らしい小説を書いて下さりありがとうございます!!! (2022年12月23日 21時) (レス) @page50 id: c4a8adec94 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 九十九天斗さん» 久しぶりにここにきました!それ故に返信遅れてごめんなさい、見つけて下さりありがとうございます!!!!!面白いといっていただけて何よりです!! (2021年12月31日 2時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
九十九天斗(プロフ) - たまたま見つけて面白すぎてここまで読み進めてしまいました…!連載中に知りたかった… (2021年11月27日 0時) (レス) id: a6414a60a8 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 永衣さん» お返事が遅くなり申し訳ありません!!ハワ…嬉しいですありがとうございます…作品を書いていて本当に良かったです!! (2021年10月14日 3時) (レス) @page46 id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
永衣(プロフ) - 連載していたころから読んでました。ふとした時に読みたくなって戻ってきます、いつ見ても最高です!本当にありがとうございます! (2021年9月13日 11時) (レス) id: d90c12946e (このIDを非表示/違反報告)
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