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小走りで敵の本拠地を駆ける太宰と北森。全力疾走ではないのは、単に現役陸上選手の北森の体力と速さに太宰が付いていけないからだ。
ふと、海底にあるこの建物が、激しい揺れに襲われた。
「地震……?」
「レイ君だね」
あぁ…と少し納得してしまった自分が居た。そうして今の揺れよりも、更に大きな揺れと何かが崩れる音を感じた。
「罠…!?」
「レイ君だね」
この建物の塵が落ちてくる程の激しい揺れ、あのレイと云う少年が起こしているのか。すると今度は壁に穴でも空いたかの様な轟音が聞こえる。
「レイくん?」
「正解」
太宰は溜め息を吐いた。そうして片手で頭を抱えて、呆れた様子で北森にこう伝える。
「彼、あんな大人しく見えて…かなりの戦闘狂なのだよ。海と隔てる壁も壊されるかもね。時間の問題だ」
ポートマフィアの幹部クラス以上の人間の許可が無い限り、あの少年を拘束する鎖は切れない。ましてや外に出る事など許されない。
だとすれば、
「……森さんか」
あの少年は確かに化け物級に力を有して居るが、建物の損害が激しい事はマフィアの人間ならば誰しもが知っている。そんな少年をこんな所に送り込む性根の悪い人間は、鷗外位だろうと太宰は思った。
「治くん」
曲がり角で北森が立ち止まり、「止まって」と太宰の前に手を出して促した。
見ると、大きな扉の前に武装した警備の男が二人。
「うわ、ムキムキガチガチの警備ぃ…でもあれ人間だね」
「撃って善い?眉間」
「君本当物騒だよね。駄目」
撃つ以外の方法?そんな物あるのか。あの男達に近づければ、あの女からぶん取った麻酔針で動きを止められるが…此処からだと、奴らと距離がありすぎる。
太宰がやけににやにやしている。嫌な予感がする。
「うふふ、君の演技力が見た〜いな〜?」
「……正気?」
「正気さ!私は君の恐ろしく完璧な演技力を見て来て居るもの。
私にはバレバレだけれど」
今度は北森が溜め息を吐いた。手に持っている拳銃を、サスペンダーのベルトの間に挟む。正面の相手からは見えない様に、背中の方に忍ばせる。
「じゃあ少し手伝って」
「善いよ、私に出来る事なら」
今から太宰に頼む事は、きっと太宰にしか出来ない。この場にいる人間が太宰で善かった。
頼む事。それは…、
「一寸、俺の事泣かしてくんない?」
「あぁ、それなら……うん???」
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【要】注意異能力者
北森鴻:十九歳。身長167cm、体重52kg。性格、異能力共に危険性があると判明。条件が揃えば、接触せずとも相手を手に掛ける事が可能な異能を持つ。
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抹茶ラテ - ふと見つけて読んでみたら凄く面白くてなかなか長文物を読まない私でも気づいたら完結の所まで!!会話文や文構成が上手で途中感動でついうるッと来てしまう場面もありました、、!このような素晴らしい小説を書いて下さりありがとうございます!!! (2022年12月23日 21時) (レス) @page50 id: c4a8adec94 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 九十九天斗さん» 久しぶりにここにきました!それ故に返信遅れてごめんなさい、見つけて下さりありがとうございます!!!!!面白いといっていただけて何よりです!! (2021年12月31日 2時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
九十九天斗(プロフ) - たまたま見つけて面白すぎてここまで読み進めてしまいました…!連載中に知りたかった… (2021年11月27日 0時) (レス) id: a6414a60a8 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 永衣さん» お返事が遅くなり申し訳ありません!!ハワ…嬉しいですありがとうございます…作品を書いていて本当に良かったです!! (2021年10月14日 3時) (レス) @page46 id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
永衣(プロフ) - 連載していたころから読んでました。ふとした時に読みたくなって戻ってきます、いつ見ても最高です!本当にありがとうございます! (2021年9月13日 11時) (レス) id: d90c12946e (このIDを非表示/違反報告)
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