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満潮の月。目が眩むほど月が明るくても、横浜の夜には夥しい
雰囲気が漂っていた。
ぴったりついて来る部下が邪魔でならない。それもその筈。今回の任務は敵の捕縛。幹部に護衛が付くのは当たり前だ。
「…ねぇ、君達は向こうを見て来てくれる?」
「いえ、自分達は太宰幹部の側でお守りせよと首領から仰せつかっております」
「ふぅん…」
撒くのも面倒だ。いっそ敵に殺されてはくれないだろうか。何てそんな都合の良いものなど無いけれど。
その時。
自信に溢れた銃声。ドシャ、と一人の黒服が倒れる音がした。
見ると、眉間を一発撃ち抜かれていた。
銃声がした方向を見る。
四階建ての建物。狙撃手が身を隠して敵を狙うにしては安全性の欠ける低い建物に…それは居た。
然しそれは、隠れてなど居なかった。
寧ろ、満潮の月を背に…堂々と立っていた。
「____我が名は『隼』。絶対的捕食者の黒き翼。お前達に
慈悲はない。這え、翼を持たない者共」
そう口にした小柄な少年。黒いパーカーの上に、黒い外套を羽織っていた。
顔を隠すこと無く、『隼』は顔を晒していた。
正体は北森だ。北森が、太宰を包囲する部下を撃ち抜いたのだ。
「何故『隼』が…!撃て!撃ち殺せ!幹部をお護りしろ!」
太宰を護る部下の集団の長が、『隼』を恐れそう命じた。
北森も瞬時に発砲し、銃弾で銃弾を相殺した。北森の為に特殊な構造に造られたこの銃弾は、相手の弾を弾き返すだけでなく、そのまま一直線に相手の眉間に到達した。
それからは早かった。慈悲も無く、表情も変えずに黒服の集団を一掃した。
残るは太宰ただ一人。
北森は愛用の銃を、意図的に四階から落とす。ガシャンとそれは壊れ、もう二度と使えない物になった。
満潮の月に照らされた少年の身体を、冷たく強い風が吹き抜けた。
「…行け、太宰治」
太宰は、月を背にした少年を見上げる。その瞳に捉えられる彼の姿。
風にばさばさと靡く少年の黒い外套が、本物の黒き翼の様で。
彼の強い意志が感じられた。
「____こう、君」
太宰はぽつりと呟いた。
君は一体、何処まで、私を、
少年は、変わらぬ表情だった。背を向け、太宰の前から姿を消して行く。
待ってくれ、と思った自分を呪いたくなった。
今更、そのような事を云える立場では…無いだろうから。
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χCielχ(プロフ) - 桜月さん» 昔の作品ですが、自分でも書いててすごく楽しかった思い出があります😌キャラの濃い夢主君でしたが楽しんでいただけたようで何よりでございます!出会うことが出来て良かった作品と言っていただけて本当に嬉しいです、見つけてくれて有難うございました! (2021年11月27日 0時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - 北森くんと太宰さんの関係が少しせつないけれど、、でも微笑ましくて、、腹黒で太宰さんloveな素の北森くんがとっても最高でした!!本当に涙なしでは読めなくらい感動しました!このような素敵な作品や北森くんに出会うことができて本当に良かったです!大好きです!! (2021年11月18日 21時) (レス) id: 125cb29da4 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - やっさんさん» その三人ともちろん安吾さんも北森の大事な人になっています!!北森はめちゃくちゃ意地悪な子ですへへへへ...!黒の時代のミミックと対峙した所は原作、それ以外は全てオリジナルでございます!約9割ほどがオリジナルかと思われます!続編は完全オリジナルです!!! (2019年9月11日 22時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - 北森くんの心を、太宰さん、織田作之助さん、中也さんの、三人でとかす物語ですね。北森くんの性格はおもぃっ切り意地悪のようですね汗。原作沿いのようですが?とりあえずハッピーエンドで続編ですね。余談?マフィアが、マリオカートで勝負って笑笑。 (2019年9月11日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 刹那さん» すすすす全て!?ありがとうございます…!こーくんですか!依存すごいですがありがとうございます嬉しいです! (2019年4月21日 14時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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