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太宰は、表情を隠す様にループタイの入った箱を額に当て、俯いていた。その両手はぎゅっと箱を握り締めている。
太宰の黒髪が、さらりと小さな箱に掛かる。
俯く太宰の顔は見えない。ちらりと見えた口唇は、軽く歯を食いしばって震えていた。
「有難う…織田作、北森君…」
泣き出しそうな声。然し太宰は、決してその顔を見せようとはしない。
「俺は…何もしてないよ」
「ううん、君は…私に渡してくれた。織田作からの…、
有難う。とても嬉しい」
…織田は、本当に太宰の事を一番に判っていたのだ。
太宰が余りにも嬉しそうな顔をするので、北森は改めて織田の
優しさが、どれ程の物かと実感した。
「そのループタイに似合う服は…そうだね、織田くんみたいな
砂色の服かな…なんて」
「織田作の…砂色?」
北森は頷く。織田と買い物をした時に、この翡翠色のループタイが、織田の着ていた砂色の外套と合うだろうなあ、と直感的に思っていた。
「…助言はした」
「え?」
「あとは、自分でそのループタイに合う服を選びなよ?」
北森は、少し首を傾けて微笑んだ。
「…判った。私の服選びの
「うん。楽しみに…してる」
太宰には、いつ会えるか判らない。もう会えないかもしれない。
「治くんは、何処に行っちゃうの」
「…明日の夜、マフィアを抜ける。私はこの通り経歴が黒いから、地下に潜らなくてはならない」
太宰は、翡翠色のループタイを見詰めて云った。
それが、それが織田くんの望みなら、治くんが成そうとしている事ならば、俺がする事はただ一つ。
本当は、行かないでと引き止めたい。だけど、
「頑張ってね」
俺は喜んで背中を押す。
「俺、高跳びでインターハイ行くから。地下に居る治くんの耳にも届く様にするから。だから」
「…うふふ。楽しみにしているね」
太宰の表情が、柔らかくなった。その表情を見て、北森は安堵する。
ふと、太宰が呟いた。
「…北森君」
「何?」
太宰は口を噤んだ。太宰が「何でもない」と云う前に、北森は
会話を続けた。
「云って?治くん」
太宰は、北森の目を真っ直ぐに見詰めた。
「次、君に会った時には…
北森は目を見開いた。そうして直ぐにふわりと笑顔になる。
「うん、勿論」
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χCielχ(プロフ) - 桜月さん» 昔の作品ですが、自分でも書いててすごく楽しかった思い出があります😌キャラの濃い夢主君でしたが楽しんでいただけたようで何よりでございます!出会うことが出来て良かった作品と言っていただけて本当に嬉しいです、見つけてくれて有難うございました! (2021年11月27日 0時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
桜月(プロフ) - 北森くんと太宰さんの関係が少しせつないけれど、、でも微笑ましくて、、腹黒で太宰さんloveな素の北森くんがとっても最高でした!!本当に涙なしでは読めなくらい感動しました!このような素敵な作品や北森くんに出会うことができて本当に良かったです!大好きです!! (2021年11月18日 21時) (レス) id: 125cb29da4 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - やっさんさん» その三人ともちろん安吾さんも北森の大事な人になっています!!北森はめちゃくちゃ意地悪な子ですへへへへ...!黒の時代のミミックと対峙した所は原作、それ以外は全てオリジナルでございます!約9割ほどがオリジナルかと思われます!続編は完全オリジナルです!!! (2019年9月11日 22時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - 北森くんの心を、太宰さん、織田作之助さん、中也さんの、三人でとかす物語ですね。北森くんの性格はおもぃっ切り意地悪のようですね汗。原作沿いのようですが?とりあえずハッピーエンドで続編ですね。余談?マフィアが、マリオカートで勝負って笑笑。 (2019年9月11日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 刹那さん» すすすす全て!?ありがとうございます…!こーくんですか!依存すごいですがありがとうございます嬉しいです! (2019年4月21日 14時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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