死ぬより先に、どうか殺して呉れ。双【文豪ストレイドッグス】

第五十九舞『激情する双傑』 ページ9

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アイザックの姿が、中原の目の前から消えたかと思えば…、






中原の真横に素早く移動しており、回し蹴りを喰らわそうとして居た。






アイザックの体術の性質は、超越した速度と遠心力。




細身のアイザックでも威力を出せるよう、昔 中原が彼に教えたものだ。





それに対し中原は、重さと威力と速さを兼ね備えて居る。






まともに体術でやり合った所で、敵う相手では無いのだ。





それも、今この訛った身体ならば尚更。







「ハッ！俺が教えたヤツも、出来る様に成ッたみてェだなァ」






中原は至って愉しそうに、アイザックの蹴りを受け止めた。







「…んの、莫迦原！！」







アイザックは苛立ちをぶつける為、中原に蹴り掛かったのだが…、




軽く受け止められた為、更に苛立ちが募るばかり。







「相ッ変わらずの口の悪さだなァおい！」






莫迦と云われ、中原も腹を立てる。






短気の二人が対面してしまうと、この様な最悪な現場になる。






太宰が見たならば大笑いだ。







「あんたこそ…直ぐ手ぇ出るだろ！」






「手前も足が出ンだろうが！」







手より足が出る方がマシだの、意味が判らねぇだの、様々な言葉が飛び交った。





睨み合って火花を散らす二人を、少女は如何したら善いか判らないままで居る。







「チッ、此処で云い会っても埒が明かねェ。丁度首領も手前に話が有る」






と、中原は重力操作でアイザックの身体を浮かせた。







「…ッ降ろせよ！」






自由に身を動かす事が出来無くなり、為す術も無く口だけになる。






「手前は特務課の監視下にあッて連れて行くのが面倒だが…
『少女を誘拐した』ッて云やァ何も云えねェ筈だぜ？」







中原は口角を上げ、宙に浮くアイザックを見上げた。





少女を助けた筈が、逆に誘拐の罪を着せられて仕舞った。





少女の事を口実に、アイザックをポートマフィアの拠点へ連れて行く。








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二年振りだろうか。





息の詰まる様な、緊張が張り詰めた空気。





拠点に着いた後も苛立って居たアイザックは、自分を拘束する黒服を蹴り飛ばしたり、暴れたりした。






その為、両手を背中で拘束されるのも当たり前だ。







「落ち着いたかよ、色男」






中原は、アイザックに振り返って云った。





太宰に『短気ゴリラ』等と呼ばれる青年が、拘束されただけで落ち着く理由が無かった。








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要注意異能力者＿＿＿＿内務省異能特務課より。

アイザック・バシェヴィス・シンガー：身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。

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