第九十五舞『フラジャイル』 ページ45
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『アイザ君、真逆飲んだの?駄目だよ!ぺーして、ペー!』
「誰が飲むかよ、こんな不味いもん」
アイザックは、誰の物か判らない血を口に含んで仕舞い、
プッと勢いよく吐き出す。
口の周りに付いた血を、かなり不機嫌そうに手の甲で拭った。
『流石は横浜最低最悪のゴリラ!あ、違った。最強の短気ゴリラ!善く全て避け切ったねえ』
太宰の巫山戯た声が、耳元で聞こえるのだ。苛立ちも募りに
募って行くばかりである。
「覚えてろ脳天ワカメ」
『はいはい、君も私も死ななかったらね』
アイザックは太宰に聞こえる様に舌打ちをし、解除装置を探すべく、疲労した身体を駆使して走り始める。
『もうそろそろだ。君には悪いけど、自傷する準備もしておいてくれ給え』
「何を今更」
『だって、痛いものは痛いでしょ?』
アイザックは笑った。太宰が大した事ない事で自分の心配をして居る事が可笑しくて堪らなかった。
いや、本当は嬉しいんだ。
「俺の事は、あんたが遣え。遠慮はすんなよ」
『…なら、もう一寸速く走り給え!』
太宰が云うと、まるで身体がそれに従う様に…疲労さえ気にならない程身体が軽くなった。アイザックは口角を上げた。
「りょーかい、腐れご主人サマ」
ギュンと効果音が付くように加速した。太宰の指示に従い、二つ目の解除装置まで辿り着く。
『ロアが口を開いた。二発目の光線が来る。その前に頼んだよ』
「云われなくても…!」
折れた短刀は使い道も無く捨てた。仕方無くアイザックは銃口を太腿に密着させ、引き金を引いた。
銃弾はアイザックの腿を貫通し、風穴を作っていた。
『アイザ君、無理は』
「俺が無理しなきゃ、あんたも街も何もかも、無くなるだろ!」
太宰の言葉を断ち切り、先程と同じような解除装置である赤い氷の結晶に触れ、異能力を放つ。
二つ目の起動解除装置を相殺した。
するとまたしても、ロアが咆哮を上げた。これで、これでコイツは本当に収まるのか?
『アイザ君!!早くロアから脱出するんだ!脱出経路はそのまま真っ直ぐ進んで、ロアの口から出た方が早い!二つの装置を破壊したから、光線は来ない筈だよ』
「待て、中也が!」
『中也なら大丈夫だ。あれでも私の元相棒だからね』
太宰の言葉には確信があった。
アイザックは脱出の為、ロアの頭部へ急ぐ。
その時だった。
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要注意異能力者____内務省異能特務課より。
アイザック・バシェヴィス・シンガー:身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。
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χCielχ(プロフ) - やっさんさん» ありがとうございます!アイザックはしかも望んでない体質ですからね…!!実はこの異能兵器、考案した奴はシンガーじゃないんですよ…さて誰でしょう…??((激辛カレーは五分五分ですかね!!!?? (2019年10月1日 19時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - アイザック編を、読み切りました。アイザックさんも、厄介な体質ですね汗。とんでもな異能兵器の発動で、冷や汗でしたが、なんで良かったです。余談、激辛カレー勝負の行方や、いかに!?(笑)。二人とも、口から火を吹くか!??。(笑) (2019年9月28日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - リアさん» ありがとうございました!カレーは…そうですね、二人とも1口目でギブしてそうです笑笑 (2019年7月16日 21時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - カレーの勝敗気になりますwwとても面白かったです!(^^) (2019年7月4日 0時) (レス) id: f94faaa2fc (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 翠柘榴さん» わーー!!ありがとうございます!見てくださったんですね…!!おっふ短気ゴリラアイザックがお世話になりました…((ひえええ勿体ないお言葉です、ありがとうございました!!!! (2019年5月23日 0時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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