第九十三舞『レクイエム』 ページ43
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空気を断ち切る様な、冷たい金属音がした。
目の前の真っ赤な氷の塊を、アイザックは短剣で砕こうと刃を振るったのだ。
しかし余りにも氷が頑丈で、短刀の刃が甲高い金属音を立てて砕けて仕舞った。
「何だこれ、硬過ぎだろ!」
自分の真紅の氷に似た様な、目の前の硬くて赤い氷に苛立ち、
アイザックは不機嫌そうに氷をげしげしと蹴った。
『まぁ…落ち着いて下さい。力に頼らずとも、貴方自身の異能力で相殺出来る筈です』
機械音の混じった、ドストエフスキーの淡々とした声。
「それを先に云えよ」
アイザックは溜め息を吐くが、折れて刃がガタガタになった
短刀で、何時もよりは浅めに自身の腿を傷付ける。
目前の赤い氷の結晶に触れ、アイザックは異能力を唱った。
すると…まるで宝石が玉砕する様に、赤い結晶はキラキラと砕け散って行く。
途端に、異能兵器『ロア』が咆哮を上げた。
グオオオ、と叫ぶそれは…ロアの内側に居るアイザック達にも、かなり五月蝿く聞こえる程大きかった。
「…ッ、次は!」
アイザックは走り出し、今先刻傷付けた腿が凍り、走る度にズキンと痛む。
『いえ、其方は逆方向です。戻って下さい』
「は、や、く、云、え!!」
『ぼくの所為では無く、貴方がせっかちなだけです』
踵を返してまた走り出し、地味に笑いながらアイザックを貶す
ドストエフスキーを、憎みたいが憎めない。
「おいドスト!あと一つは!?」
アイザックが切羽詰まった様子でドストエフスキーに問う。
『成程…そう来ましたか』
銀のピアスから、やけに愉しそうなドストエフスキーの声が、砂嵐の様な雑音と共に途切れ途切れ聞こえて来た。
これでは、ドストエフスキーの指示は途切れて仕舞う。
「ドスト!聞こえてんのか!この…オンボロ通信機!」
更に雑音は酷くなる。けれどドストエフスキーは冷静に
アイザックに伝える。
『貴方の____です。__を、____さい』
途切れた言葉を伝えた後、砂嵐はドストエフスキーの声を呑み込むように、遂に通信機からは雑音しか聞こえなくなった。
「…は、それ…本気かよ…おい!ドストエフスキー!!
聞こえて____」
アイザックの言葉が遮断される。何故なら、急に無音になったからだ。
『聞いて居るよ、短気な番犬君』
それは、猛獣をも鎮める声。
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第九十四舞『ジェノサイド』→←第九十ニ舞『スピットファイア』
要注意異能力者____内務省異能特務課より。
アイザック・バシェヴィス・シンガー:身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。
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χCielχ(プロフ) - やっさんさん» ありがとうございます!アイザックはしかも望んでない体質ですからね…!!実はこの異能兵器、考案した奴はシンガーじゃないんですよ…さて誰でしょう…??((激辛カレーは五分五分ですかね!!!?? (2019年10月1日 19時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - アイザック編を、読み切りました。アイザックさんも、厄介な体質ですね汗。とんでもな異能兵器の発動で、冷や汗でしたが、なんで良かったです。余談、激辛カレー勝負の行方や、いかに!?(笑)。二人とも、口から火を吹くか!??。(笑) (2019年9月28日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - リアさん» ありがとうございました!カレーは…そうですね、二人とも1口目でギブしてそうです笑笑 (2019年7月16日 21時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - カレーの勝敗気になりますwwとても面白かったです!(^^) (2019年7月4日 0時) (レス) id: f94faaa2fc (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 翠柘榴さん» わーー!!ありがとうございます!見てくださったんですね…!!おっふ短気ゴリラアイザックがお世話になりました…((ひえええ勿体ないお言葉です、ありがとうございました!!!! (2019年5月23日 0時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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