第九十舞『カタストロフィ』 ページ40
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南西に向かって走った。
アイザックが走っていたのは、家々の屋根の上だった。
先程、車を運転して居る時に酔ったから車には乗りたくない。
何より、車で建物を避けながら走るより、アイザックの速さで障害物無しに駆けた方が早い。
アイザックは走りながら、白銀のピアスを耳に差し込んだ。
すると、全身に電撃が走るようにバチバチと震えた。
「おい、早く出ろ!貧弱!ドストエフスキー!!」
暫く沈黙が長らく続いた後、静かな声が耳に響いた。
『おや…矢張り、二割の確率が中りましたか』
その口調から、ドストエフスキーが妖しげな笑みを浮かべて居る事が想像出来た。
「いいから…何にでもなる!異能兵器の解除方法を全部教えろ!」
『すみません、一寸待って下さい。今食事中なので。
冷めてしまいます』
完全に巫山戯て居るドストエフスキーに、アイザックはわなわなと拳を強く握り、怒鳴る。
「ざっっっけんな!!あぁ冷めろ冷めろ!寧ろ凍れ!」
苛立ちが沸点に到達したアイザックは、尖った犬歯を剥き出しにして横浜中に響き渡る声量でそう云った。
『…少し、静かに。凍りはしません』
フーッと猫が威嚇する様な様子を見せるアイザック。
そんなやり取りをして居るうちに、先程防壁を展開した場所までやって来た。
「ドスト!俺がロアの中に入るまでには食い終われよ!」
ドストエフスキーと呼ぶのは余りにも長く、楽に呼べるよう
省略した。
アイザックは短刀を取り出し、自身の手首を傷付けた。
そのまま海に向かって走り出す。
血液を節約する為、アイザックは自分の足の接地面だけを凍らせ、海の上を走ったのだ。
しかし、千メートルと云うのは地味に遠い。後どれ位の血の量が必要だろうか。
そう考えて居ると、頭上にヘリがバタバタと音を立ててやって来た。
____敵は兵器だけでは無い。
国木田の言葉が過ぎった。アイザックは腿にある拳銃に手を掛けたが、頭上から縄はしごが投げられた。
「おらアイザック!!掴まれ!」
黒い帽子、外套、橙色の髪。
小柄な男の姿が、ヘリの扉から見えた。
中原だ。何故だか中原の声を聞いた瞬間、この男は信頼出来ると確信した。
飛び上がり、縄はしごに掴まる。
「ようガキ、独りで立ち向かうたァ 一丁前になッたじゃねェか」
中原は、掴まるアイザックを見て笑った。
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第九十一舞『デウスエクスマキナ』→←第八十九舞『打開しろ銷魂』
要注意異能力者____内務省異能特務課より。
アイザック・バシェヴィス・シンガー:身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。
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χCielχ(プロフ) - やっさんさん» ありがとうございます!アイザックはしかも望んでない体質ですからね…!!実はこの異能兵器、考案した奴はシンガーじゃないんですよ…さて誰でしょう…??((激辛カレーは五分五分ですかね!!!?? (2019年10月1日 19時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - アイザック編を、読み切りました。アイザックさんも、厄介な体質ですね汗。とんでもな異能兵器の発動で、冷や汗でしたが、なんで良かったです。余談、激辛カレー勝負の行方や、いかに!?(笑)。二人とも、口から火を吹くか!??。(笑) (2019年9月28日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - リアさん» ありがとうございました!カレーは…そうですね、二人とも1口目でギブしてそうです笑笑 (2019年7月16日 21時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - カレーの勝敗気になりますwwとても面白かったです!(^^) (2019年7月4日 0時) (レス) id: f94faaa2fc (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 翠柘榴さん» わーー!!ありがとうございます!見てくださったんですね…!!おっふ短気ゴリラアイザックがお世話になりました…((ひえええ勿体ないお言葉です、ありがとうございました!!!! (2019年5月23日 0時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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