第八十七舞『染做セヨ曇天』 ページ37
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蒼白い光線が、見事に此方の赤黒い防壁に直撃する。
まるで、小さな盾ひとつで世界を呑み込む津波を防いでいる感覚に陥る。
アイザックが展開する防壁。光線が直撃した反動で、身体が
ビリビリと音を立て、アイザックは
「……ッ!く、そ!」
ズル、ズル…と、アイザックが押されている。
地面が抉れる程、アイザックも耐えて居るのだが…この光線の
威力が予想外だ。
こんなものが、防げず横浜の街に当たったら。
「ふん、無様だな」
芥川が、アイザックの隣に立った。
「あんた、下がれ!危な____」
切羽詰まった顔で芥川の事を見た。アイザックは、芥川が
取った行動に、思わず言葉が切れた。
芥川が、共に防壁を押さえ出したのだ。
細くて軽そうで、力が無さそうなその身体。
アイザックは目を見開いたまま、芥川を見た。
「…っは、はは…!あんた、最高だな…!」
芥川は顔を顰め、機嫌が良さそうに笑うアイザックに対して、
少し殺意を覚えた。
「戯言を云う余裕が有るならば策を考えろ。でなければ
光線ごと貴様を引き裂く」
怖くない冗談だな。
お蔭で頭が冴えた。
光線が吐き続けられ、押されたままのこの状況。アイザックは
口角を上げたまま、空を見た。
「芥川」
「何だ。死に様でも考えたか」
「空だ!防壁を傾ける」
にっ、とアイザックは笑った。先刻より余裕のある笑みだ。
もしも失敗すれば、この辺りは焼け野原になるだろうが…、この辺りの住民の避難は、探偵社がしてくれている。
「成程名案だ…って、顔してんな?それ。はいどうも」
「何を一人で喚いている。決まったのならそれをやるぞ」
我ながら名案を思い付いたアイザックは上機嫌だが、当の芥川は上機嫌のアイザックが鬱陶しくて堪らない。
「羅生門!」
アイザックが叫ぶ。羅生門はそれに応える様に、数多の黒獣がアイザックの背後から出現した。
黒獣は防壁に力を加え、防壁の角度を斜めに傾ける。
すると如何だ。ロアの蒼白い光線が、何も無い空に向かって放たれる。
偶然その空に居合わせてしまった鳥は、塵になり何も残らなくなった。
雲を貫き、大きな穴を開ける。空が蒼白い不思議な色に染められた。
光線が止み、真紅の防壁も砕け、黒衣は芥川の元へと帰る。
二人は、静かに息を切らして居た。
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要注意異能力者____内務省異能特務課より。
アイザック・バシェヴィス・シンガー:身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。
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χCielχ(プロフ) - やっさんさん» ありがとうございます!アイザックはしかも望んでない体質ですからね…!!実はこの異能兵器、考案した奴はシンガーじゃないんですよ…さて誰でしょう…??((激辛カレーは五分五分ですかね!!!?? (2019年10月1日 19時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - アイザック編を、読み切りました。アイザックさんも、厄介な体質ですね汗。とんでもな異能兵器の発動で、冷や汗でしたが、なんで良かったです。余談、激辛カレー勝負の行方や、いかに!?(笑)。二人とも、口から火を吹くか!??。(笑) (2019年9月28日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - リアさん» ありがとうございました!カレーは…そうですね、二人とも1口目でギブしてそうです笑笑 (2019年7月16日 21時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - カレーの勝敗気になりますwwとても面白かったです!(^^) (2019年7月4日 0時) (レス) id: f94faaa2fc (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 翠柘榴さん» わーー!!ありがとうございます!見てくださったんですね…!!おっふ短気ゴリラアイザックがお世話になりました…((ひえええ勿体ないお言葉です、ありがとうございました!!!! (2019年5月23日 0時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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