第八十三舞『再起セヨ破壊』 ページ33
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翌日の正午。
武装探偵社、会議室。
「____と、云う理由だ諸君。異能兵器の場所は、正確には
南西に千メートル弱。起動した場合の対処法は、大型機械の内部だ。内部への入口は、鰐型の機械で云う尾の部分にある」
会議室の机上で、大きな地図を広げて南西の青い海を指差した。
「成程、流石は乱歩さんだ」
乱歩が自慢げに鼻を高くすると、太宰は乱歩を尊敬した様に褒めた。
「起動すれば、かなり厄介な事になるだろう」
乱歩が椅子に腰掛け、机の上に足を放り投げて云った。
そうしてハンチング帽を人差し指でくるくる回し、またポスンと自分の頭にそれを被せた。
真剣な表情をした乱歩に、社員達は息を呑む。
「…でも、だ。もう起動した可能性が極めて高い。海底の奥深くで。それもつい先日。ゆっくり海面に向かって上昇して居る」
乱歩が眼鏡を外し、肩を落とした。
探偵社の要である乱歩が肩を落とす程となれば、社員一同は
当然 焦燥に駆られる。
緊迫した雰囲気をぶち壊す様に…アイザックの短刀が、地図の
南西の海に突き刺さる。
「…俺の親が作ったらしいな、この兵器は。絶対に止めてやる」
今は異能兵器の恐怖よりも、アイザックの殺気の方が勝っている。
しかし、国木田が眼鏡を押し上げ、冷静にこう云う。
「強気は善い事だが、地図と机に穴を開けるな」
「それは悪い」
ふと、僅かな揺れを賢治が察知した。
「あの、何だか揺れて居ませんか?」
賢治の頭上に疑問符が浮かび上がる。
次第に揺れは、全員が察知出来る程の大きな揺れに成長した。
そうして、天井の電気がチカチカと点滅する様になり、それは
まるで緊張した心臓の鼓動を表したかの様だった。
「真逆…」
アイザックは大きな揺れさえ物ともせず、バッと窓に近づいて横浜の景色を見た。
____目に焼き付いた。
横浜の街の道路が、浅い津波で水浸しにされて居る。
見た所、その深さは幸い浅く…足首が濡れる位の深さでは
あるが、走るのには充分邪魔そうだ。
南西の海の方に目を凝らすと…乱歩の云う通り、千メートル程先に巨大な何かが見える。
アイザックの目は丸く開き、その様子に恐らく皆も察したの
だろう。
「却説…、面倒な事になったね」
太宰はそう云うが、異能兵器『ロア』の起動は防げない物だと判って居た。
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要注意異能力者____内務省異能特務課より。
アイザック・バシェヴィス・シンガー:身長 169cm、体重 53kg。横浜のゴロツキ。非好戦的だが、気が短い。民間人に危害を加えた事例は無いが、我々は監視を続ける必要がある。
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χCielχ(プロフ) - やっさんさん» ありがとうございます!アイザックはしかも望んでない体質ですからね…!!実はこの異能兵器、考案した奴はシンガーじゃないんですよ…さて誰でしょう…??((激辛カレーは五分五分ですかね!!!?? (2019年10月1日 19時) (レス) id: 6fa1655de3 (このIDを非表示/違反報告)
やっさん(プロフ) - アイザック編を、読み切りました。アイザックさんも、厄介な体質ですね汗。とんでもな異能兵器の発動で、冷や汗でしたが、なんで良かったです。余談、激辛カレー勝負の行方や、いかに!?(笑)。二人とも、口から火を吹くか!??。(笑) (2019年9月28日 20時) (レス) id: fd24bdc7a6 (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - リアさん» ありがとうございました!カレーは…そうですね、二人とも1口目でギブしてそうです笑笑 (2019年7月16日 21時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - カレーの勝敗気になりますwwとても面白かったです!(^^) (2019年7月4日 0時) (レス) id: f94faaa2fc (このIDを非表示/違反報告)
χCielχ(プロフ) - 翠柘榴さん» わーー!!ありがとうございます!見てくださったんですね…!!おっふ短気ゴリラアイザックがお世話になりました…((ひえええ勿体ないお言葉です、ありがとうございました!!!! (2019年5月23日 0時) (レス) id: 7ff5a81624 (このIDを非表示/違反報告)
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